12−13シーズン、男女シングル振り付けランキング


ほぼ恒例となってきている、シーズンごと振り付け個人的ランキングです。
今年も素敵なプログラムがそろいました。プレ五輪シーズンらしく、挑戦したプログラムが多かったように思います。五輪はどうしても正統派とか王道な楽曲が揃いますからね。このシーズンの振り付けを振り返って、五輪シーズンの傾向を考えていきましょう。
尚、SPもFSもよかったと思う選手は、特に好きだった方をランキングに入れて、カギカッコでもう一つをくくっておきました。


1位 ジェレミー・アボットFS「彼を帰して」振り付け:ベンジー・シュイマー? 
 (SP「Spy」振り付け:有香さんとの合作?) 

3年連続アボットが首位です。これはもう、不動の1位。国別でみられることになってとても嬉しいです。
去年のスケートアメリカの時点で「もう今季の振り付けベスト1はアボットのフリーだよ!」と宣言していましたが、それってことは3年連続アボットのコレオが1位になるっていうことで。ツイッターのフォロワーさんに「もう別枠にしなよ」と突っ込まれましたよと。
まぁそれだけ近年のアボットの振り付けにハズレがないってことなんですが(少なくとも私にとっては)、静かに繰り返される旋律の中で魅せられるっていうのが素敵だなというのが今季FSに対する素直な感想でございます。それに加えて、スケーティングがとても詩的に変化しましたね。
ノーミスがないので、全米のをば。


2位 鈴木明子FS「シルク・ドゥ・ソレイユ O」振り付け:パスカーレ・カメレンゴ 

 (SP「キル・ビル」振り付け:アンジェリカ・クリロワ)
特にコレオグラフィックシークエンスの部分が秀逸です。いい意味でふわふわして軽やかなスケーティングと柔らかさが融合していました。「鳥が季節を感じながら大空を羽ばたいていく」というイメージをまさしく体現したプログラム。お見事!
NHK杯の演技がよかったので。


3位 ハビエル・フェルナンデスFS「チャップリンメドレー」振り付け:デヴィッド・ウィルソン

これ、実際に見たほうが絶対いいプログラムだと思います。繊細で優しさが伝わる、けどオシャレなプログラムです。こういう小気味いいプログラムを作るのは、本当にウィルソンはうまい。


4位 パトリック・チャンSP「エレジー」振り付け:ジェフリー・バトル

  (FS「ラ・ボエーム」デヴィッド・ウィルソン)
まさか私が「Pちゃんの振り付けよかった!」と言う日が来るとは思わなんだ。。。特にワールドの演技は神懸ってましたねぇ。「アランフェス」とは段違いの情緒が出ておりました。FSの「ラ・ボエーム」も能天気→急転直下の悲恋という感じでとてもよろしいです。ローリーから抜けたら、一気にあか抜けた感じです。
世界選手権はPちゃんから「P様」になった感じに素晴らしかったので。


5位 キーラ・コルピSP「亜麻色の髪の乙女」 振り付け:デヴィッド・ウィルソン

美しい…………!!! ウィルソンはキーラの美しさを際立たせることに成功しましたな。いう事なし。
とりあえずフィンランディアのキーラ様をば。


6位 ユリア・リプニツカヤSP「剣の舞」振り付け:ニコライ・モロゾフ

リプのイメージは「アイロンウーマン(鉄の女)」ってより、個人的には「スタンド使い」。キャンドルスピンとか、どう見てもスタンドでしょ!!そんなわけでこのプログラムは、ユリア・リプニツカヤのスタンドです(笑)。衣装もかっちょええ。
カップオブチャイナでのSP1位の演技を。


7位 無良嵩人FS「Shogun」振り付け:トム・ディクソン
 
 (SP「マラゲーニャ」振り付け:阿部奈々美)
衣装がキタロー(苦笑)。……じゃなくて、こういった「和」のテイストって中国と間違えられそうな印象をジャッジに持たせがちですが、弦のつま弾く音とムラ君の豪快なジャンプは実によく調和されていたなと思います。クワドを除けばワールドの演技がよかったかな。むらげーにゃこと、SP「マラゲーニャ」も無骨ながらも美しい男の闘牛士と言った感じでステキ。(どーもメンコなイメージじゃないのだ)
クワドは失敗しましたが、ほかがめちゃくちゃよかった世界選手権の演技。


8位 李子君FS「眠れる森の美女」 振り付け:ローリー・ニコル

妖精みたいで超カワイイ。言うことなし。カワイイ。もうカワイイ。もうね、ホント、彼女にオーロラ姫のヴァリエーションを躍らせたいわ。可憐になること間違いなし。そのくせジャンプは癖がなくて特に着氷がしっかりしてる。可愛いだけじゃないのよ。


9位 町田樹SP「F・U・Y・A」 振り付け:ステファン・ランビエール

まっちー@らんびの振り付けを見ると、何となく「まっちーがこう動きたい」というより、「まっちーの動きを美しく見せるには、ランビエールがこう動きたいんだな」とかそんなことを想像するのですが、そう考えるとこの二人は表現の方向性がやっぱり似ているのかもなぁとも思います。
後は、まっちーがもっと洗練されるのを待つのみ。
チャイナでの演技。


10位 ケヴィン・レイノルズ「ピアノ協奏曲3番」振り付け:宮本賢二
ミヤケンが確実に海外にライバルを増やしただろう振り付け。身体のラインのきれいさ、ムーブメントの良さが際立ったコレオでした。
元々ケヴィンは「クワドをいくら飛んでも表彰台に上がれない」とファンの間(ていうか私の兄に)で失礼ながら言われていたこともあるのですが、ここ数年の彼のスケーティングは本当によくなってきました。特に、滑っている時の姿勢が良くなりました。
ミヤケンさん、ぜひ来年もケヴィンを。次はスクウェアつながりで、「ヴァルキリー・プロファイル」とか如何?(さすがにないか)
文句なしの優勝を飾った四大陸での演技。


次点3作
高橋大輔FS「道化師」振り付け:シェイリーン・ボーン
賛否両論あったと思うけど、個人的にはいいなと思った。ただ、よく見える分複雑な思いがある。だって去年セルゲイさんがやったやつだし。何でこの二人は曲がかぶるんだよー。
今季の大ちゃんのコレオに関しては、迷走している部分も手探りな部分もありましたが、手探りな状態でここまで見せられるっていうことは、彼の表現の自力がそもそも高いということです。普通だったらこうはいきません。とりあえずただ滑るだけで黄色い声援が来るのは彼位ですよ(苦笑)。

クセーニャ・マカロワ「メガポリス」 振り付け:オレグ・グリンカ
コンテンポラリー的な振り付けだけど、彼女によくあってる。マカロワちゃんはビールマンもI字スピンも出来るけど、突出して体が柔らかいという感じでも、優雅な感じではないので、こういうジュベール的にパキパキして「音にはめる」振り付けは意外に似合っていたなと思います。続行希望。

今井遥「ディベルティメント」振り付け:佐藤有香 SP「シャレード」もよかったねぇ。有香さん的イメージでは、遥ちゃんはオードリー・ヘップバーンなのかな? 来季は「おしゃれ泥棒」など如何? 前メンデルスゾーンの「無言歌」をやった時「チェロの音色が似合う女の子は稀」と書きましたが、同様の事を言いましょう。「10代の女の子で、モーツアルトが似合う女の子は稀」と!


今季振り付けの総括:個人的にはウィルソンの振り付けでいいのが多かったなぁ、というのが率直な意見。羽生君に関してはすこし試行錯誤しているような印象を受けましたが、フェルナンデスの「チャップリン」の軽快な小気味よさと優しさ、Pちゃんの「ラボエーム」での能天気さ(いい意味でのね!)とかよく出していたんじゃないですか。
ここ数年キーラはウィルソンと仕事をすることが多いですが、ウィルソンとシェイリーンはいい感じにキーラの美しさを際立たせることに成功しましたよね。美しさが増しました。そして技術も。何気に5種もちなのですよ(5種揃うことは極端に少ないが)

こう見ると新採点に対応し、かつ「魅力的な振り付け」をされる振り付け師は、カナダを含む北米、もしくは北米を拠点としている方が多いような気がしています。ローリー・ニコルやデヴィッド・ウィルソン、そしてジェフリー・バトルはカナダ人。マリーナ・ズウェワやパスカーレ・カメレンゴはデトロイトに拠点を置いています。ヨーロッパ出身のスケーターが引退後に北米に指導拠点を置いてそこに集まってくる……という感じなんでしょうか。
いずれにせよ「振り付けの本場」が北米になっている以上、ヨーロッパ拠点(特にロシア!)のコレオグラファーは振り付けを熟考した方がいいんではないかと思いました。プルちゃんの「サン=サーンスメドレー」は確かにプルシェンコらしいっちゃあプルシェンコらしいプロだったが、今一つな印象を受けたぞ。もっとよく言えば「振り付けの魅力に欠ける」感じです。新採点を熟考すべし。

そうそう、無良君の「Shogun」を見て「日本人のスケーターでディクソンの振り付け」っていうのが、もっと見たいと思った。ムラ君の振り付けは、メリハリを「メリハリです!」って強調しないで流れの中にさりげなく主張させているのがよかった。

個人的に実はタラソワって新採点のルールわかってないんじゃね?と思ったりもしないでもない。


他に振り付け雑感。
・やっぱりあなたは女神憑きになると最強、ようやくマキューシオからロミオにクラスチェンジかと思ったらまだまだあなたはマキューシオ、セルゲイ・ヴォロノフの「ロミオとジュリエット
・かなり好きだったなぁ、織田くんの「魔法使いの弟子

・ソチ終わったらヴォーカル付きが解禁されるんだから、それまで待ってくださいよ、アデリーナ・ソトニコワの「バーレスク

・溌剌で超カワイイ、グレイシー・ゴールドの「パジャマゲーム」

・綺麗なプログラムでした、村上佳菜子の「プレイヤー・オブ・テイラー」

・よくぞ続行してくれました、素敵になりましたね、中村健人くんの「交響曲第三番オルガン付き」

愛の夢よりナンボもマシ、浅田真央の「白鳥の湖

・ジャンプが一つ足りないのはモロゾフの責任、フローラン・アモディオの「セバスチャン・ダミアーニ、メドレー」

ブライアン・ジュベールインセプション」をお蔵入りしないでほしかったよ。

・でもブライアン・ジュベールグラディエーター」もかっこよかったのでいいよ!

・うちのおかんが「なんか……ビバリーヒルズ青春白書みたい……」と評した、リチャード・ドーンブッシュの「ダニーエルフマン、メドレー」

・最後のフードは一体なんなんだ、ていうか衣装がこれ千年パズルじゃね? アレクサンデル・マヨロフの「Life Begins Again」 異色ボレロ、イロモノと来たので来季は正統派滑ってほしいなぁ。

・カワイイのに体型はカナディアン女子なのがツボです、ケイトリン・オズモンドの「カルメン


おまけ。
エキシは評さないスタンスなんですが、今季の羽生結弦の「花になれ」、そして高橋大輔の「ブエノスアイレスの春」は、特によかったエキシビションナンバーでした。
この二人は今季、振り付けで結構苦労した部分もありますが、そのなかでも個性的で、かつ魅力的なショーナンバーを用意してくれました。大ちゃんは「ブエノスアイレスの春」のなかで、滑りからタンゴのうねりを表現していましたし、はにゅーくんはそのしなやかで優しいスケーティングを「花になれ」の中で表していました。

そーいや今季、初めてJスポでユーロ男子を全部見ました。一緒に見ていたおかんがヴィクトール・ファイファー選手を見て、「なんか……ひたすら美しい選手がいてもいいと思うの……」とよーわからんことおっしゃっていましたな。いや、わかるけどさ。



さて、来季は五輪シーズン。何が出そろうでしょうかね。