宮廷の諍い女についてつらつらと

「宮廷の諍い女」というドラマが面白い。
そんなわけで今日は宮廷の諍い女について話す。


舞台は、中国清代の雍正帝王朝。清王朝最大のスキャンダル・九王奪嫡を制して即位をした雍正帝は、3年に一度の妃選びの儀式で漢族の娘の甄嬛を見初める。
親友の眉荘、儀式で出会った安陵容とともに後宮入りした甄嬛。そんな彼女を待ち受けていたのは、皇帝の寵愛を争い、嫉妬と陰謀を巡らせる妃嬪たちだった。
皇帝の寵愛を受けた甄嬛は嫉妬との対象になり、数々の危機に見舞われるが持ち前の聡明さで乗り越えていく。しかし数々の陰謀で疲れ果てた甄嬛は出家してしまい……。
ここまでざっくり書きましたが、大体内容は女の陰謀陰謀陰謀に次ぐ陰謀です。「まさに中国版大奥の真骨頂」などと言われとりますが、大奥なんてぬるいぬるい。偽装妊娠、隙あらば冷宮(罪を犯したりした妃嬪が監禁されるところ。ここに入れられたら大体の人間が発狂する)に送られ、聡明ならば他の妃嬪から疎まれ、家柄がよいとその勢いを陛下から逆に警戒され、残酷な発言をすれば「お前は残酷だ」と毒殺され、寵愛を失った妃嬪はほかの妃嬪から三刻ほど跪けと言われたり(イジメの質が何とも陰湿だよ!)大鑑からも軽んじられ、妃嬪の父親が投獄されたらこれまでのお返しとばかりにその父親のもとに大量のネズミを押し付けたり(ペストになります)、妊娠したらしたで皇后から流産を促す薬を押し付けられたり、ちなみに子供を産んだら皇后の手で始末され、ついでにその妃嬪も始末され、こいつやべえなと思ったら妊娠したと思わせて偽装して、ついでに謹慎させるよとか、
いろいろありますがこのドラマで全部起こったことです。
ちなみに中国なので一人の失敗や罪が一族郎党皆殺しになったりします。妃嬪の行動が一族を左右するよ!



中国というか、中国語圏で超ブームになり、「あの宮廷女官ジャクギを超えた!」とか言われたそうな。
宮廷女官ジャクギはこれ。


私の友人で中国に留学している子がいるんですが、その流行りっぷりはすごかったらしいです。仕事中でも「後宮・甄嬛伝(中題)」のDVDを見る人がいるぐらい。現地にいる人がそういうんだから間違いない。
内容があまりにもドロドロしていますが、これがリピートして視聴されていたんですからすごいもんです。76話という殺人的な話数があるというのに。
国が安定していたり、経済がノリにのっていると、その国は国を挙げて歴史ドラマを作りますし、そこから歴史ドラマブームが起きます。
ですが、歴史ドラマだけでなく、今中国ではものすごくたくさんのドラマが制作されています。
中国ドラマに関しては、「宮廷女官ジャクギ」でこれから差引されると思います。ジャクギ以降とジャクギ以前、という感じで。
ジャクギが中国で放送されたときは「あと10年ジャクギを超えるドラマは現れないだろう」と言われていました。ですが、それをあっさりと抜いてしまったドラマがある。それが今回の「宮廷の諍い女」だったと。


ドラマについて言及するまえに。ちょっとした前知識を。

雍正帝
清王朝第四代目皇帝(ドラマのナレーションでは第五代とありますが、間違いです)。第五代皇帝。
即位期間が長かった康熙帝(位1662〜1722だった確か)の4番目の息子。即位したときは御年45歳だったそうな。
別名ケチで働き過ぎの赤ペン先生。史実の雍正帝は倹約家で、24時間働きすぎて過労死し、官吏の書状を見ては一つ一つ添削して間違ってるよと送り返す人間だったそうです。


○九王奪嫡
康熙帝は当初、皇后の子である第2皇子を皇太子として擁立させていた。しかしこいつは相当なバカだったため1712年ころに廃位。その後は皇太子を立てず、誰を皇帝にするか明確にしないまま1722年に死去してしまった。ここから康熙帝の王子たちによる王位争いが繰り広げられると。
諸説では死ぬ間際の康熙帝が、「第14皇子に即位させろ」と言ったのを、側近が十をとって「(康熙帝は)第4皇子を即位させろとのたまった」と捻じ曲げたというものもある。第4皇子と第14皇子は同腹の兄弟だが、兄弟仲はあまりよくなく、雍正帝が即位したのちは第14皇子は幽閉されている。ちなみにその側近はロンコドといい雍正帝によって謀殺された。


後宮における妃嬪の位。
正室である皇后を除き、側室のランキングは次のとーり。
上から順に……。
・皇貴妃(定員1人)
・貴妃(定員2人)
・妃(定員4人)
・嬪(定員6人)
・貴人(定員なし)
・常在(定員なし)
・答応(定員なし)
答応が一番下で、皇貴妃が一番上。入宮の際、家柄がよかったりすると貴人、そこまで家柄がよくなかったりすると答応に封じられる。ここから昇格するかどうかはその人次第。
ちなみに清王朝満州族の王朝なので、入宮の時に同じぐらいの家柄の娘で、満州族、漢族が一人ずついたら、満州族の娘の方を貴人にし、漢族の娘を常在として入宮したりする。中盤に差し掛かったころ、主人公と同じぐらいの家柄の女が入宮するのだが、満州族の娘だったので貴人からスタートだった。



さて、前知識はこれぐらいにして。
「宮廷の諍い女」についてもちっと詳しく。


○萌える。辮髪系イケメン男子。
大学で終わった東洋史の先生は「わたしぃ、清の時代嫌いなんですけどぉー」とズバッとおっしゃる先生でしたが、辮髪の男子というのは何とも萌えるのです。
………あれ。話がつながってない。


………………そう、清の時代には、限られたイケメンにしか似合わない当時のアーキタイプなヘアースタイル、ザ・辮髪があったのです!

これまでワタクシ、「異性のツラに異様に厳しいクロサキなどと数々のあだ名を頂きましたが、辮髪系イケメン男子を提唱はしてこなかったのです不覚!
辮髪ってあれですよ。前の部分を全部そり上げて、後ろの長髪を三つ編みにするという独特のヘアスタイルですが、これは似合う人間がやったら本当に似合うのです。むしろ辮髪の方がしっくりくる、というイケメンもいるぐらいです。


そんな辮髪系イケメン男子複数とネオロマンスな恋愛を繰り広げるのが「宮廷女官ジャクギ」でした。


では「宮廷の諍い女」はどうなのか。
それは先述したとおりの陰湿陰険悪質な陰謀の内容に加えて、閉ざされた後宮で枯れたオッサンの辮髪の寵愛を受けるのに疲れた主人公が、外の世界で美しい辮髪と恋に落ちその愛を貫けるか失わずにすむのか、というところにもお話がありました。

宮廷の諍い女には一人の美しい辮髪が出てきます。それは果郡王といい、雍正帝の弟で、康熙帝の第17皇子です。
この果郡王役のリー・トンシュエさんはめちゃくちゃ辮髪が似合います。
想像してみてください。そのイケメンは、辮髪という特殊なヘアスタイルも似合ってしまうほどのイケメンです。そして風流で典雅な貴公子です。笛と詩歌が得意です。主人公を助けるためなら割と何でもします。そして重要ポイントは、「自分があなたのことを好きだから」という主観的な発想からではなく、「この人が一番喜ぶことはなんだろう」という他者に対する客観性から行動します。
さらに重要ポイントは、この話における美しき辮髪は、彼一人なのです!!

この果郡王に萌えずして誰に萌えるのだ!いや、いない!!



○皇帝の寵愛と唯一の妻
このお話は、後宮での悪質な陰謀を乗り越え、自分の地位を確立させていくサクセスな面もあります。一方で「真の愛」が本当に得られるのか、得られたまま添い遂げられるのか、という部分もピックアップされています。

お話の最初で甄嬛はいいます。
「女子なら、夫と添い遂げたいもの」(確か7話だったっけなー)


甄嬛の妹が陛下に見初められそうになるとき言います。
「わたくしが望むのは、陛下の一番大事な女子になることではないのです。一人の男性の、唯一の妻でございます」


第2部までで絶大な権威をほこった華妃のセリフ。
「わたくしは陛下を一番愛していた。ほかの女のもとに行く日は眠れなかった」



後宮では皇帝からの「寵愛」こそが自分の身を守る最大の武器です。ですが、「寵愛」と、「真の愛」というのは別物なのです。たとえば「こいつのところ数か月言ってなかったからツラでも見てやるか」という姿勢で会いに行ってくれても、それは愛とはいいませんよね。なので、後宮においての一番の肝は、「真の愛を得られるか」ではなく、「どれだけ陛下に対して従順になれるか、心を砕けるか」になってきます。
だから上記のセリフを言った人間は思い悩むことになるのです。



○美女、美女、美女に続く美女
装飾品や衣装の類の美しさもありますが、なんといっても美女がおおい。主人公甄嬛役のスン・リーなんか同じ人間とは思えないぐらい綺麗すぎますし、皇后役のエイダ・チョイなんて17歳でミス香港とってます。そのほか、新人女優も眉荘役のラン・シー、安陵容のタオ・シンランもそれぞれ違ったタイプの美女です。そしてなんといっても華妃役のジャン・シン。彼女の演技は非常に高く評価され、「コン・リーをほうふつさせる」とも言われていました。
でも美女が多い、というのもそれもそのはずです。後宮に入るほどの女に、ニシローランドゴリラとチンパンジーを足して二で割ったようなそんな微妙なツラの女を起用するわけがありません。……まぁ、へしゃむくれたごうりきあやめみたいな人はいたけど。


○程よい諍いっぷり
このドラマはタイトルの通り「諍い女」ですから、常に何かが起こります。何も起こらない回はありません。
そんなわけなので「今日は諍いっぷりがパネエかったなー」「今日はいまいちだったなー」と毎日放送しているので、「今日はどれだけ諍うんだろう」という楽しみかたもあります。
ちなみにオールスターで諍ってたのは63話「運命の後宮裁判」。



ここまで宮廷の諍い女について書いていきましたが、今BSジャパンの初回放送では67話まで来ました。全76話なので、もう10話もありません。
毎回激しい内容だったけど、ここまで見るともう毎日見るのが楽しくって仕方がありません。だって、お話が進まない回がないんだもの!長いんですが実は無駄がないんです!

そんなわけで宮廷の諍い女、





お勧めです!!!




中国の辮髪魂を食らえーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!