「一週間のしごと」文庫化について

あけましておめでとうございます。2019年ですが、今年もよろしくお願いいたします。今回はちょっと思い出話をば。本当は現在進行形ではまっている「宝石商リチャード氏の謎鑑定」の感想を書こうと思ったのですが、ずっと前に書こう書こうと思っていたことを書いていこうかと思います。

 

 

 

去年11/22、創元推理文庫から一冊の本が文庫で発売されました。それは永嶋恵美さんの「一週間のしごと」です。私の昔の記事をさかのぼってみると、2005年にミステリフロンティアから出版されたハードカバー版を買っている、という記事が残っています。

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この日記を始めたのが2005年4月で、当時高校生だった私の頭の悪い記事が多々存在しています。改めて読み返すと冷や汗しか出てこないのですがそれはともかく。

ともあれこの「一週間のしごと」は、ハードカバーの初版2005年11月から13年の時を経て、2018年11月に文庫化というかたちで再び世に出てきてくれたのです。

 

思えば、私が作者の永嶋恵美さんの作品が好きになったのは、高校生の時に読んだ「一週間のしごと」からでした。

 

元々永嶋恵美さんはその昔、映島巡名義でジャンプノベルでデビューした作家さんでした。昔のジャンプノベルから3冊「マインドアサシン」のノベライズを担当されていて、私の家に1巻目だけそのノベライズが置いてありました。

2004年の中学生の時に初めて「マインドアサシン」のノベライズを読み、実際の漫画も読んだことがない、そして映島さんの本も一冊も読んだことがないのに、読み進めるうちにキャラクターの心情から心をわしづかみにされて、ものがたりの中までぐいぐい引っ張られていく感覚は今でも覚えています。

その作者の書いた一冊の本が気に入ったら、次に私が行ったことは「作者について知る」ことでした。ジャンプノベルのプロフィールには昔の情報しか書いていないので検索。その時(2004年時)に、「永嶋恵美としても作家活動をしていて」「『せんーさく』、『ニライカナイ』、『転落』の3冊を出している」という情報でした。ただ、それらの作品はまだ文庫化もされていなくて、本屋に行っても見当たらないので興味はあるけどさてどうしたものかと思い、暫くは離れていたのですが……。

 

2005年、桜庭一樹の「少女には向かない職業」のハードカバー版を買った時に、ミステリフロンティアの「次回配本予定」の作品に『永嶋恵美作「一週間のしごと」』の文字が。

 

速攻、本屋で注文して取り寄せました。……しかも一緒に取り寄せているのが桜庭一樹の「ブルースカイ」ですね。桜庭一樹のこの2冊は私に「一週間のしごと」を読ませるための天使かよ、なんて今更ながら思う……。

 

改めて読み返し……。何も変わらずにスリリングな一週間が展開されていて、それに奔走する3人の中高生がいる。渋谷で拾った子供をめぐって、母親が死に、遠くへ行き、警察がきて逃げて……。その間に挟まれる不穏な男女の関係が絡みだして、主人公の恭平の人間関係的にもものすごく変化が訪れて……。という感じです。

そして奔走する3人。成績優秀だけど平凡な恭平(どの辺が平凡?めちゃくちゃ頭いいじゃん)、非常識が服を着て歩いているかのような菜加(でも優しい。根はものすごくお人よし)、そして中学生にして真正オタクの克己(菜加の弟で、アダルトゲームのコピーとか買ったりする。2次元にしか興味ない)が三者三様良い働きをしている。

不穏な事件をベースにこの3人の活躍が生き生きとえがかれていて、ものすごく面白く感じたのを改めて思い出しました。

 

それから私は「一週間のしごと」が好きなのは、私と主人公の恭平と高校の境遇がちょっと似ているところにもある気がしています。

恭平は私立の特進クラスにいて土曜日も授業があり、そして成績優秀。私は私立の特進クラスにいて土曜日も授業があり成績はまぁ聞くなという感じなのですが、共通しているのは「授業漬け、勉強漬け」なところです。その中でこの一週間を、波乱万丈で頭脳を駆使しして、でも授業は出るし、でも携帯今すぐ見ないと情報確認できないし、でも子供もどうにかしないといけないし、でも夜中には帰ってこないと母親が帰ってくるし……という、恭平自身の「高校生という特性」と「拾った子供をどうにかしないといけない」事情が物凄くうまく混ざり合っていて、そのスリルが余計に働いて面白く感じ、そして恭平の「高校生らしからぬ頭の良さと行動力」に、当時の自分が憧れていたのかもしれません。……私には恭平のような頭のよさも、テスト前に学校を抜け出す度胸もなかったよなーハハハ。

 

色々と長々と書きましたが。とにかく私は、この「一週間のしごと」の文庫化を13年間待っていたような気もするし、再び世に出たのが本当に嬉しい。

いろんな方に読んで頂きたい、特に、永嶋恵美さんの作家性を「イヤミス」と思っている方にこそ読んで頂きたい。……そうすればヒナコの続編出るかもしれないし!

 

なので文庫になっている今、是非是非にとお勧めしたい一冊です。

 

 

一週間のしごと (創元推理文庫)

一週間のしごと (創元推理文庫)

 

 

 

一週間のしごと (ミステリ・フロンティア)

一週間のしごと (ミステリ・フロンティア)

 

 

単行本版と文庫版の装丁を並べてみました。どっちも好きですが、私は「学校の中」にいる単行本版の方がより好きです。これは多分、思い入れによるものでしょうな。