3/24文学フリマ前橋参加メモ

ご無沙汰しております。クロサキです。実は、3月24日に開催された第三回文学フリマ前橋に、出展者として参加してきました。サークル名は「月香堂書房」。

実を言うと、文学フリマというイベントに参加するのは、10年ぶりぐらいです。その時は「タルトタタン」というサークル名でした。でも今もタルトタタンやってます。タルトタタンは大学の創作仲間とやっているのですが、今回の文学フリマは完全に私の主導だったので、サークル名は別の方がいいだろうという判断です。まあ、見ている方にはあまり関係のない事情なのです。

で、作った本です。

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『白百合の思い出、猫目座の行く末』

四人の書き手によるジャンルごった煮なんでもござれの短編集。騎士を目指す少年の成長と決意を描いた「貴公子未満の進路希望」、夏至祭を舞台に、少年少女の生と死のの輝きと儚さを幻想的に映し出す「ミッドサマー・イヴ」、飼い猫との愛らしい日常の一コマを描いた「猫と下僕の朝」、彼氏と別れた女性の追憶を通して百合の普遍性に迫る「百合色の追憶」の4編を収録。

私は「ミッドサマー・イヴ」という小説を書きました。

 

以下、作品について。あとがきのようなもの。

【そもそも】

本のあとがきでも少し触れたのですが、私はブルターニュの民話が好きなのです。イスの都の話とか、夜の洗濯女、アンクウにさまよえる幽霊船等々、薄暗くて、でも綺麗にまとまっているあの感じ。特に好きなのが、アンクウと呼ばれる死に神の話でした。

私の愛読書の一つに「騎士と妖精 ブルターニュケルト文明を訪ねて」という、大昔に音楽之友社から出た本があります。この本によると、ブルターニュにおけるアンクウという存在は、あまり恐ろしい存在ではない。メッセンジャー的な役割を果たす親しみやすい存在だった、とあります。キリスト教文化が入り込んだせいで、アンクウと言う存在が恐怖の対象になってしまったと。そのくだりを見た事がきっかけの一つです。物語の舞台はあんまり現実的な風景が出てこなかったので、ファンタジーにしました。

もう一つのきっかけが、何を書くかで迷っていたところ、友人の弓ちゃんから「クロサキ版というか、少年版の『思い出のマーニー』やらない?」という提案を頂きました。私はジブリ映画の「思い出のマーニー」が物凄く大好きなのです。一番好きなジブリ映画は何?って聞かれたらマーニーと答えます。マーニーの内容と言ったら「薄暗い少女が遠方で謎の美少女(人外)と出会う」「百合である」で……。

そんなわけでアンクウの物語とマーニーが私の中で合わさって、少しずつ物語が出来上がっていきました。

 

【そもそもその②】

上記を思いついたというか着想したのは2015年です。当時考えていたのは「父親を惨殺されて以来自殺願望のある少年が、引き取られた村で出会った謎の少女と交流するうちに、自分自身を見つめなおす」というものでした。

キーになる場所が「森」だったり、季節が冬だったり、司祭の名前がラドルファスだったり、細かい部分は違います。が、少年少女のちょっと薄暗い交流、少女が謎の存在、という部分は変わっていません。少年が少女を通して、死という出来事、そして自分自身を見つめる……というものに、なるはずでした。なのでこれは本来、2015年に「タルトタタン」で発表されるべき話だったのです。が……。

当時私が読んでいた本に、『死刑執行人サンソン 国王ルイ16世の首を刎ねた男』というものがあります。これを漫画家の坂本眞一が独自で解釈しなおしたのが、現在グランドジャンプで連載されている「イノサン ルージュ」になります。フランス革命ルイ16世の首を刎ねたシャルル・アンリ=サンソンを主人公にした漫画なのですが、私はこの漫画とこの本が、超っ絶大好きなのです。(大体この漫画好きだというと各方面からドン引きの嵐なのですが、まぁいいや)

その成分が、このネタに入り込んでしまったのです。アンクウ=死に神死に神と呼ばれる存在=ムッシュー・ド・パリ=死刑執行人サンソン……とイコールの連鎖が続きます。んで、ネタを暫く蓋をして放っておいたら、このネタは異常発酵していました。異常発酵したそのまま話を考えていたら……。あ、やばい。これもう、考えていたものと別のものになっとる!!!!!考えていたものよりも、数倍グロくて数倍救いがないものになっていました。何よりも、当初考えていた「死に神という題材で、あまり怖くない物語」が、「死に神と言う題材で、超絶グロい物語」になっていたのです。結末的に、私は主人公の少年をああする予定は当初はなかったのですが、話がああなっちゃうとああするしかない、だってそうしないとかわいそうだし(読んだ人間には分かるので…)……と思いながら書き……。

これは当初考えていたものとは、別のものだ。だからもう、これはこのまま書いていこう。

そうして出来上がった小説が、コミティアで発表した「氷れる花園」になります。

ちなみにこれは、のちに完全版として「小説家になろう」で掲載したので、買っていただいた方には非常に申し訳ないのですが、できれば「小説家になろう」での完全版を読んで頂きたいです。

https://ncode.syosetu.com/n5633ds/

 

【なので……】

この話を書く作業は「過去、作者が異常発酵させて別のものにしてしまった物語を、本来あるべき姿に戻す」作業でした。ちょこちょこ設定は変えたりいじったりはしましたが。

なので、2作読んでいただいた方は分かるかもしれませんが、話の流れは殆ど同じです。そして時間が経過していますが、世界も同じです。

ただ今回書いた「ミッドサマー・イヴ」の方が脇キャラが動いていた感じはします。後は、あるキャラクターが桜庭一樹さんの「赤朽葉家の伝説」のリスペクトになっています。

今回は、当初、2015年に思った物語がそのままかけたのが嬉しかったです。ブレさせちゃいけないのにねぇ。笑。ただ、「当初思いついたものと別の物語になってしまったら、そこを切り取って別のものとして書く。その後に本来の物語を書く」という事は可能だと知りました……。

 

【表紙、装丁、入稿等について】

殆どいぬちよさんに丸投げでした。表紙絵はいぬちよさん作、そもそも入稿データもいぬちよさんが作ってくれました。私がやったのは確認と入稿のみです。ありがとういぬちよさん。

 

【現地販売】

偶然フォロワーさんとお会いしたり、北海道の寿郎社さんのブースに行ったり、非常に楽しかったです。最近地方でいくつかやっているとはいえ、文フリの開催地の一つが住んでいるところから車で行ける距離なのが嬉しかったです。東京から販売で来てくれた弓ちゃん、一緒に搬入とカバー付け等々手伝ってくれたみっぽこ氏、本当にありがとうございました。そして何より、ブースに来てくださった方、手に取ってくださった方、手に取って買ってくださった方、本当にありがとうございました。