3/24文学フリマ前橋参加メモ

ご無沙汰しております。クロサキです。実は、3月24日に開催された第三回文学フリマ前橋に、出展者として参加してきました。サークル名は「月香堂書房」。

実を言うと、文学フリマというイベントに参加するのは、10年ぶりぐらいです。その時は「タルトタタン」というサークル名でした。でも今もタルトタタンやってます。タルトタタンは大学の創作仲間とやっているのですが、今回の文学フリマは完全に私の主導だったので、サークル名は別の方がいいだろうという判断です。まあ、見ている方にはあまり関係のない事情なのです。

で、作った本です。

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『白百合の思い出、猫目座の行く末』

四人の書き手によるジャンルごった煮なんでもござれの短編集。騎士を目指す少年の成長と決意を描いた「貴公子未満の進路希望」、夏至祭を舞台に、少年少女の生と死のの輝きと儚さを幻想的に映し出す「ミッドサマー・イヴ」、飼い猫との愛らしい日常の一コマを描いた「猫と下僕の朝」、彼氏と別れた女性の追憶を通して百合の普遍性に迫る「百合色の追憶」の4編を収録。

私は「ミッドサマー・イヴ」という小説を書きました。

 

以下、作品について。あとがきのようなもの。

【そもそも】

本のあとがきでも少し触れたのですが、私はブルターニュの民話が好きなのです。イスの都の話とか、夜の洗濯女、アンクウにさまよえる幽霊船等々、薄暗くて、でも綺麗にまとまっているあの感じ。特に好きなのが、アンクウと呼ばれる死に神の話でした。

私の愛読書の一つに「騎士と妖精 ブルターニュケルト文明を訪ねて」という、大昔に音楽之友社から出た本があります。この本によると、ブルターニュにおけるアンクウという存在は、あまり恐ろしい存在ではない。メッセンジャー的な役割を果たす親しみやすい存在だった、とあります。キリスト教文化が入り込んだせいで、アンクウと言う存在が恐怖の対象になってしまったと。そのくだりを見た事がきっかけの一つです。物語の舞台はあんまり現実的な風景が出てこなかったので、ファンタジーにしました。

もう一つのきっかけが、何を書くかで迷っていたところ、友人の弓ちゃんから「クロサキ版というか、少年版の『思い出のマーニー』やらない?」という提案を頂きました。私はジブリ映画の「思い出のマーニー」が物凄く大好きなのです。一番好きなジブリ映画は何?って聞かれたらマーニーと答えます。マーニーの内容と言ったら「薄暗い少女が遠方で謎の美少女(人外)と出会う」「百合である」で……。

そんなわけでアンクウの物語とマーニーが私の中で合わさって、少しずつ物語が出来上がっていきました。

 

【そもそもその②】

上記を思いついたというか着想したのは2015年です。当時考えていたのは「父親を惨殺されて以来自殺願望のある少年が、引き取られた村で出会った謎の少女と交流するうちに、自分自身を見つめなおす」というものでした。

キーになる場所が「森」だったり、季節が冬だったり、司祭の名前がラドルファスだったり、細かい部分は違います。が、少年少女のちょっと薄暗い交流、少女が謎の存在、という部分は変わっていません。少年が少女を通して、死という出来事、そして自分自身を見つめる……というものに、なるはずでした。なのでこれは本来、2015年に「タルトタタン」で発表されるべき話だったのです。が……。

当時私が読んでいた本に、『死刑執行人サンソン 国王ルイ16世の首を刎ねた男』というものがあります。これを漫画家の坂本眞一が独自で解釈しなおしたのが、現在グランドジャンプで連載されている「イノサン ルージュ」になります。フランス革命ルイ16世の首を刎ねたシャルル・アンリ=サンソンを主人公にした漫画なのですが、私はこの漫画とこの本が、超っ絶大好きなのです。(大体この漫画好きだというと各方面からドン引きの嵐なのですが、まぁいいや)

その成分が、このネタに入り込んでしまったのです。アンクウ=死に神死に神と呼ばれる存在=ムッシュー・ド・パリ=死刑執行人サンソン……とイコールの連鎖が続きます。んで、ネタを暫く蓋をして放っておいたら、このネタは異常発酵していました。異常発酵したそのまま話を考えていたら……。あ、やばい。これもう、考えていたものと別のものになっとる!!!!!考えていたものよりも、数倍グロくて数倍救いがないものになっていました。何よりも、当初考えていた「死に神という題材で、あまり怖くない物語」が、「死に神と言う題材で、超絶グロい物語」になっていたのです。結末的に、私は主人公の少年をああする予定は当初はなかったのですが、話がああなっちゃうとああするしかない、だってそうしないとかわいそうだし(読んだ人間には分かるので…)……と思いながら書き……。

これは当初考えていたものとは、別のものだ。だからもう、これはこのまま書いていこう。

そうして出来上がった小説が、コミティアで発表した「氷れる花園」になります。

ちなみにこれは、のちに完全版として「小説家になろう」で掲載したので、買っていただいた方には非常に申し訳ないのですが、できれば「小説家になろう」での完全版を読んで頂きたいです。

https://ncode.syosetu.com/n5633ds/

 

【なので……】

この話を書く作業は「過去、作者が異常発酵させて別のものにしてしまった物語を、本来あるべき姿に戻す」作業でした。ちょこちょこ設定は変えたりいじったりはしましたが。

なので、2作読んでいただいた方は分かるかもしれませんが、話の流れは殆ど同じです。そして時間が経過していますが、世界も同じです。

ただ今回書いた「ミッドサマー・イヴ」の方が脇キャラが動いていた感じはします。後は、あるキャラクターが桜庭一樹さんの「赤朽葉家の伝説」のリスペクトになっています。

今回は、当初、2015年に思った物語がそのままかけたのが嬉しかったです。ブレさせちゃいけないのにねぇ。笑。ただ、「当初思いついたものと別の物語になってしまったら、そこを切り取って別のものとして書く。その後に本来の物語を書く」という事は可能だと知りました……。

 

【表紙、装丁、入稿等について】

殆どいぬちよさんに丸投げでした。表紙絵はいぬちよさん作、そもそも入稿データもいぬちよさんが作ってくれました。私がやったのは確認と入稿のみです。ありがとういぬちよさん。

 

【現地販売】

偶然フォロワーさんとお会いしたり、北海道の寿郎社さんのブースに行ったり、非常に楽しかったです。最近地方でいくつかやっているとはいえ、文フリの開催地の一つが住んでいるところから車で行ける距離なのが嬉しかったです。東京から販売で来てくれた弓ちゃん、一緒に搬入とカバー付け等々手伝ってくれたみっぽこ氏、本当にありがとうございました。そして何より、ブースに来てくださった方、手に取ってくださった方、手に取って買ってくださった方、本当にありがとうございました。

 

「一週間のしごと」文庫化について

あけましておめでとうございます。2019年ですが、今年もよろしくお願いいたします。今回はちょっと思い出話をば。本当は現在進行形ではまっている「宝石商リチャード氏の謎鑑定」の感想を書こうと思ったのですが、ずっと前に書こう書こうと思っていたことを書いていこうかと思います。

 

 

 

去年11/22、創元推理文庫から一冊の本が文庫で発売されました。それは永嶋恵美さんの「一週間のしごと」です。私の昔の記事をさかのぼってみると、2005年にミステリフロンティアから出版されたハードカバー版を買っている、という記事が残っています。

空前の酒賢ブーム到来の予感 - クロサキイオンの徒然草

この日記を始めたのが2005年4月で、当時高校生だった私の頭の悪い記事が多々存在しています。改めて読み返すと冷や汗しか出てこないのですがそれはともかく。

ともあれこの「一週間のしごと」は、ハードカバーの初版2005年11月から13年の時を経て、2018年11月に文庫化というかたちで再び世に出てきてくれたのです。

 

思えば、私が作者の永嶋恵美さんの作品が好きになったのは、高校生の時に読んだ「一週間のしごと」からでした。

 

元々永嶋恵美さんはその昔、映島巡名義でジャンプノベルでデビューした作家さんでした。昔のジャンプノベルから3冊「マインドアサシン」のノベライズを担当されていて、私の家に1巻目だけそのノベライズが置いてありました。

2004年の中学生の時に初めて「マインドアサシン」のノベライズを読み、実際の漫画も読んだことがない、そして映島さんの本も一冊も読んだことがないのに、読み進めるうちにキャラクターの心情から心をわしづかみにされて、ものがたりの中までぐいぐい引っ張られていく感覚は今でも覚えています。

その作者の書いた一冊の本が気に入ったら、次に私が行ったことは「作者について知る」ことでした。ジャンプノベルのプロフィールには昔の情報しか書いていないので検索。その時(2004年時)に、「永嶋恵美としても作家活動をしていて」「『せんーさく』、『ニライカナイ』、『転落』の3冊を出している」という情報でした。ただ、それらの作品はまだ文庫化もされていなくて、本屋に行っても見当たらないので興味はあるけどさてどうしたものかと思い、暫くは離れていたのですが……。

 

2005年、桜庭一樹の「少女には向かない職業」のハードカバー版を買った時に、ミステリフロンティアの「次回配本予定」の作品に『永嶋恵美作「一週間のしごと」』の文字が。

 

速攻、本屋で注文して取り寄せました。……しかも一緒に取り寄せているのが桜庭一樹の「ブルースカイ」ですね。桜庭一樹のこの2冊は私に「一週間のしごと」を読ませるための天使かよ、なんて今更ながら思う……。

 

改めて読み返し……。何も変わらずにスリリングな一週間が展開されていて、それに奔走する3人の中高生がいる。渋谷で拾った子供をめぐって、母親が死に、遠くへ行き、警察がきて逃げて……。その間に挟まれる不穏な男女の関係が絡みだして、主人公の恭平の人間関係的にもものすごく変化が訪れて……。という感じです。

そして奔走する3人。成績優秀だけど平凡な恭平(どの辺が平凡?めちゃくちゃ頭いいじゃん)、非常識が服を着て歩いているかのような菜加(でも優しい。根はものすごくお人よし)、そして中学生にして真正オタクの克己(菜加の弟で、アダルトゲームのコピーとか買ったりする。2次元にしか興味ない)が三者三様良い働きをしている。

不穏な事件をベースにこの3人の活躍が生き生きとえがかれていて、ものすごく面白く感じたのを改めて思い出しました。

 

それから私は「一週間のしごと」が好きなのは、私と主人公の恭平と高校の境遇がちょっと似ているところにもある気がしています。

恭平は私立の特進クラスにいて土曜日も授業があり、そして成績優秀。私は私立の特進クラスにいて土曜日も授業があり成績はまぁ聞くなという感じなのですが、共通しているのは「授業漬け、勉強漬け」なところです。その中でこの一週間を、波乱万丈で頭脳を駆使しして、でも授業は出るし、でも携帯今すぐ見ないと情報確認できないし、でも子供もどうにかしないといけないし、でも夜中には帰ってこないと母親が帰ってくるし……という、恭平自身の「高校生という特性」と「拾った子供をどうにかしないといけない」事情が物凄くうまく混ざり合っていて、そのスリルが余計に働いて面白く感じ、そして恭平の「高校生らしからぬ頭の良さと行動力」に、当時の自分が憧れていたのかもしれません。……私には恭平のような頭のよさも、テスト前に学校を抜け出す度胸もなかったよなーハハハ。

 

色々と長々と書きましたが。とにかく私は、この「一週間のしごと」の文庫化を13年間待っていたような気もするし、再び世に出たのが本当に嬉しい。

いろんな方に読んで頂きたい、特に、永嶋恵美さんの作家性を「イヤミス」と思っている方にこそ読んで頂きたい。……そうすればヒナコの続編出るかもしれないし!

 

なので文庫になっている今、是非是非にとお勧めしたい一冊です。

 

 

一週間のしごと (創元推理文庫)

一週間のしごと (創元推理文庫)

 

 

 

一週間のしごと (ミステリ・フロンティア)

一週間のしごと (ミステリ・フロンティア)

 

 

単行本版と文庫版の装丁を並べてみました。どっちも好きですが、私は「学校の中」にいる単行本版の方がより好きです。これは多分、思い入れによるものでしょうな。

煩悩の108冊、選びます【2018年版】

その昔、作家の桜庭一樹さんが「野生時代」のご自身の特集号で「煩悩の108冊」を選ばれておりました。桜庭さんは「桜庭一樹読書日記」を長らくハヤカワ書房のHPで連載されていた通り、かなりの読書家です。年400冊読むとか。
そんな桜庭さんが選んだ「108冊」。

一応、本を読む人間の端くれとして……決して私は読書家ではない。それだけは断言できるのですが、「私もいっちょ108冊選んでみるか!」という感じで、選んでみました。
ルールは「一人の著書に対して、本一冊。映画・漫画も入れてOK」です。少しはやりやすいかな。
では、やってみます。
★が付いているものが映画、☆が付いているものが漫画、何もついていないものが書籍になります。

* * *

クロサキイオン、煩悩の108冊」

1.「ゴルゴダ深見真/徳間文庫

2.★「ヴェニスに死す」監督:ルキノ・ヴィスコンティ/1972年公開

3.「GOTH」乙一/角川文庫

4.「王妃マリー・アントワネット遠藤周作/新潮文庫

5.「ひとしずくの星」淡路帆希/富士見L文庫

6.「死刑執行人サンソン 国王ルイ16世の首を刎ねた男」安達 正勝/集英社新書

7.「ボトルネック米澤穂信/新潮文庫

8.「寅さんとイエス」米田彰男/ちくま書房

9.「完全教祖マニュアル」架神恭介/ちくま書房

10.「銀盤カレイドスコープ」(全9巻)海原零/集英社スーパーダッシュ文庫

11.「宋代鬼談」毛利志生子/コバルト文庫

12.「水妖記」フーケ―/岩波文庫

13.「ルバイヤード」オマル・ハイヤーム/岩波文庫

14.「おいしいベランダ。」シリーズ 竹岡葉月/富士見L文庫

15.「秘密の花園三浦しをん/新潮文庫

16.「聖少女」倉橋由美子/新潮文庫

17.「ウィーンの密使 フランス革命秘話」藤本ひとみ/講談社文庫
  ※のちに「マリー・アントワネットの恋人」と改題して集英社文庫から出版

18.「華岡青洲の妻有吉佐和子/新潮文庫

19.「マルドゥック・スクランブル冲方丁/ハヤカワ文庫

20.「この闇と光」服部まゆみ/角川文庫

21.「生きていてもいいかしら日記」北大路公子/PHP文庫

22.「何者」朝井リョウ/新潮文庫

23.「アンチェルの蝶」遠田潤子/光文社文庫

24.「李白の月」南伸坊/ちくま文庫

25.「楽園まで」張間ミカ/徳間文庫

26.「バットカンパニー」深町秋生/集英社文庫

27.「スノーグース」ポール・ギャリコ/新潮文庫

28.「妖怪びしょ濡れおかっぱ」松原真琴/ジャンプJブックス

29.「エンジェル・ハウリング」(全10巻)秋田禎信/富士見ファンタジア文庫

30.「ホリーガーデン」江國香織/新潮文庫

31.「月光亭事件」太田忠司/創元推理文庫

32.★「さらば我が愛/覇王別姫」監督:チェン・カイコー/1993年公開

33.「ヘルマフロディテの体温」小島てるみ/ランダムハウス講談社

34.「クワイエットルームへようこそ」松尾スズキ/文春文庫

35.「家守綺譚」梨木果歩/新潮文庫

36.「ともだち刑」雨宮処凛/講談社文庫

37.「蒼い炎」羽生結弦/扶桑社

38.★「キック・アス」監督:マシュー・ボーン/2010年公開

39.「氷上の光と影」田村明子/新潮文庫

40.「一週間のしごと」永嶋恵美/東京創元社

41.「海東青 摂政王ドルゴン」井上祐美子/中公文庫

42.★「SRサイタマノラッパー」監督:入江悠/2009年公開
  ※同監督によるノベライズもおすすめ

43.「文学少女シリーズ」(本編全8巻)野村美月/ファミ通文庫

44.☆「背すじをピン!と 鹿高競技ダンス部へようこそ」(全10巻)横田卓馬/ジャンプコミックス

45.☆「機動警察パトレイバー」(文庫版全10巻)ゆうきまさみ/サンデーコミックス

46.「夏の庭」湯本香樹実/新潮文庫

47.☆「マインドアサシン」(文庫版全3巻)かずはじめ/集英社文庫

48.「夜は短し歩けよ乙女森見登美彦/角川文庫

49.「ロスト・ユニバース」(全5巻)神坂一/富士見ファンタジア文庫

50.「東京タブロイド」(全9巻)水城正太郎/富士見ミステリー文庫

51.「でかい月だな」水森サトリ/集英社文庫

52.「僕僕先生」仁木英之/新潮文庫

53.「推定少女桜庭一樹/角川文庫

54.「白昼堂々」長野まゆみ/集英社文庫

55.「自己流園芸ベランダ派」いとうせいこう/河出文庫

56.「小説 秒速5センチメートル新海誠/角川文庫

57.「マリア様がみてる いばらの森」紺野緒雪/コバルト文庫
  ※40冊以上出ているマリみての中で、いばらの森はケッサクだと思うためいばらの森だけチョイス。

58.「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ本谷有希子/講談社文庫

59.☆「ピルグリム・イェーガー」(全6巻)伊藤真美冲方丁/少年画報社

60.「姫神 −邪馬台王朝必史−」(全5巻)定金伸治/集英社スーパーダッシュ文庫

61.「ポスドク!」高殿円/新潮文庫

62.★「プロジェクトA」監督:ジャッキー・チェン/1984年公開

63.「ブルターニュ幻想民話集」アナトール ル・ブラーズ/ 国書刊行会

64.「聖なるイメージの音楽」西原 稔/音楽選書

65.「騎士と妖精―ブルターニュケルト文明を訪ねて」中木康夫/音楽選書

66.「林檎の礼拝堂」田窪 恭治/集英社

67.「マタイ受難曲」磯山雅/東京書籍

68.「ブルターニュ・風と沈黙」田淵 安一/人文書院

69.「音楽と言語」G・トラシュブロス・ゲオルギアーデス/講談社学術文庫

70.「大作曲家 リスト」エヴェレット・ヘルム/音楽之友社

71.★「タクシードライバー」監督:マーティン・スコセッシ/1976年公開

72.「札幌アンダーソング」小路幸也/角川文庫

73.「Welcome to My World」ジョニー・ウィアー/新書館

74.「アウグスティヌス講和」山田晶/講談社学術文庫

75.「最果てアーケード」小川洋子/新潮文庫

76.「墨攻酒見賢一/文春文庫

77. 「煌夜祭多崎礼/中公文庫

78.「先生とわたしのお弁当」田代裕彦/富士見L文庫

79.「ロッキン・ホース・バレリーナ大槻ケンヂ/角川文庫

80.「緋色の研究」コナン・ドイル/新潮文庫

81.「ワーホリ任侠伝」ヴァシィ章絵/講談社文庫

82.「とある飛空士への追憶犬村小六/ガガガ文庫

83.☆「鋼の錬金術師荒川弘(全27巻)/ガンガンコミックス

84.「ミミズクと夜の王紅玉いづき/電撃文庫

85. 「花の歳月」宮城谷昌光/講談社文庫

86.☆「ワルサースルー」たかなし霧香(全2巻)/ガンガンコミックス

87.「いつか日の当たる場所で」乃南アサ/新潮文庫

88.☆「サクラテツ対話篇藤崎竜(全2巻)/ジャンプコミックス

89.☆「この音とまれ!」(15巻以下続刊)アミュー/集英社

90.「尾木花詩希は褪せたセカイで心霊を視る」紺野アスタ/ダッシュエックス文庫

91.「フィギュアスケート 美のテクニック」野口美恵/新書館

92.☆「MIDWEY 星野之伸自選短編集」(全2冊)星野之伸/集英社文庫

93.「パリの秘密」鹿島茂/中公文庫

94.「海潮音上田敏/新潮文庫

95.★「戦場のピアニスト」監督:ロマン・ポランスキー/2003年公開

96.★「思い出のマーニー」監督;米林章宏/2014年公開

97.「卓上語録」M.ルター/教文館

98.「朗読者」B.シュリンク/新潮文庫

99.☆「風と木の詩竹宮惠子/白泉社文庫

100.「流浪刑のクロニコ」菅野 隆宏/ジャンプJブックス

101.「もう一度読む山川世界史山川出版社

102.「スケートボーイズ」碧野圭/実業之日本社

103.「トップスケーターの流儀」中野友加里/双葉社

104.「ショパンを嗜む」平野啓一郎/新潮社

105.「女子的生活坂木司/新潮社

106.「出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと」花田菜々子/河出書房

107.☆「異国迷路のクロワーゼ武田日向(全2巻)/KADOKAWA

108.「早わかりキリスト教」宮越俊光

* * *

き、きつかった……。途中大分キナ臭い本がありますが、まぁ「学生の時に使っていた本も入れちゃえ」的な感じで入れています。
ちなみに「早わかりキリスト教」はキリスト教について基本的なことを押さえたい人におすすめです。
こうやって選んでいると、「一人の著書につき、1冊まで」という縛りが結構きついのがわかります。作家読みして読んでいる範囲が狭いとネタ切れを起こすという。
見る人が見ると「あー、クロサキ選ってわかるわー」というチョイスになりました。
これからまた読んでいって、これがまた変わっていくんでしょうな。それはそれでまたよろしいのかもしれません。なので、また数年後に自分の「煩悩の108冊」を選びなおしてみようかな。何が残って何が消えているだろう。
楽しみだ。

篠原美希「ヴァチカン図書館の裏蔵書 聖杯伝説」

篠原美希「ヴァチカン図書館の裏蔵書 聖杯伝説」新潮文庫nex

ヴァチカン聖庁の枢機卿を大叔父にもつ玄須聖人は、ローマ大学留学中。ダビデ像に似た美丈夫のマリク神父と友達になり、オペラ公演に出掛けることに。会場では、奇しくもヴァチカン図書館の蔵書の刻印がある本を拾い、なぜか惨殺死体まで発見してしまう。本の持ち主を突き止め、イギリスの屋敷を訪ねるのだが──聖人とマリクが、暗号化された「聖杯」の秘密を読み解き、真相に迫る!
http://shinchobunko-nex.jp/books/180119.html

* * *

前回、第一巻の感想を書いた時に、「聖人と聖人の「友達」になったダビデことマリク神父のやりとり及び斉木兄貴の過保護っぷりがもっと読みたいので新潮文庫nex様続編お願いいたします。」とかなり熱を入れて「続編希望!」と書いたのだが、今年の3月、その私の願いが通じて晴れて続編が刊行された。ひゃっほい!感想は今更だけどね!!


まず、手前にいるマリクという名前の金髪の美丈夫が神父であるということから話を進めたい。
ついでに言えば前回のお話で主人公に「世界に一人ぐらい、私を神父として扱わない人間がいてくれてもいいのではないかと思っています」という最高の殺し文句で友達になってくださいと言った本人で、神父らしい慈愛に満ち、神父らしからぬ切れ味の鋭さを持ち合わせているのである。なんで私、このシリーズ好きなんだろうと思い返したら「マリクが好きだからだ!」というところで落ち着きました。深い教養、芸術性を解する心と明晰な頭脳に、職は神父。最高です。
そんなわけで友達になったので、この巻では主人公の聖人と一緒にオペラに出掛けたり(私服!神父の私服!!)、出掛けた先で事件に巻き込まれたり、事件に巻き込まれて夜中うなされる聖人をつきっきりで見ていたり、二人で気分転換でちょっとイギリスに行ったり、聖人と血まみれのジョニーについて語ったり(ジョニーとはある身体部分を指します。この血まみれのジョニーが話のキモになるから全く変態だよ!)、マリクの出番が多いのが個人的に嬉しいところ。……友達になったら過保護っぷりが上がりましたね。いいぞもっとやれ。
で、聖杯伝説と副題がついているのですが、前回の謎が「ベナンダンディ」で今回の謎が「聖杯伝説」なので、今度は聖杯伝説についての謎を追っていくわけです。聖人が巻き込まれた事件も、血まみれのジョニーもすべて聖杯伝説に通じていくのです。これに関してはお話が二転、三転していくので面白いです。やったことはないんですがFGOとかやっている人にはぴりっとくるものがあるのでは。聖人も「聖杯って、ゲーム?」とか言っていたので。
それから2巻では、夢とかうっかりとか偶然ではなく、聖人が自発的に活躍する場面があるので、そこは必見です。

お願いだから3巻出てね!!私マリク神父が大好きだからお願いします新潮文庫nexさん!!!!!!!!!!!!

遠田潤子「蓮の数式」

こちらのブログでは今年初めてなので、あけましておめでとうございます今年もよろしくお願いいたします。
今年も相変わらず読書感想を中心にこのブログを進めていこうかと思います。
それでは今年の一冊目です。

遠田潤子「蓮の数式」中公文庫

婚家から虐げられ孤立する女が出会ったのは、自らの生い立ちと算数障害に苦しむ男。愛を忘れた女と愛を知らない男が向かう先には、何が待っているのか――。
(出版社の紹介文より)
http://www.chuko.co.jp/bunko/2018/01/206515.html

* * *

実は書籍化された遠田潤子さんの作品を、2018年2月12日現在、最新作の「オブリヴィオン」を除いて全て読んでいる。「月桃夜」「雪の鉄樹」を読み、その後の「アンチェルの蝶」で、どっぷりと「暗い。重い。くどい」の沼にはめられて以来、遠田さんの作品のファンになってしまったのである。

で、この「蓮の数式」。
主人公は35歳のそろばん塾講師の女性、千穂。天涯孤独な彼女は大阪の北畠にある立派な家に嫁いだが、「子供が産めない」という理由だけで義母からは虐げられ、子どもを強く望む旦那からは過酷な不妊治療と屈辱的なセックスを強要されている。
開始20ページで、千穂と旦那の間で何が起こったかを文章化してみよう。
1)結婚記念日に実母のお気に入りの料亭→「君もうまかったやろ?」
2)自分が起こした人身事故を千穂に擦り付ける→「金で解決してこい」
3)事故った相手を逃がしたヨメに一言→「役立たずにもほどがある」
4)夜、性欲が激しい旦那→「一発やらせろ」
5)すべてが終わった後の旦那の一言「君は最高の嫁や」

……。

何だこの地獄。
開始20ぺージで「おげえええええええええええ」って吐きそうな気分になりながら(実際には吐いておりませんが)小説読んだの、生まれて初めてだよ。この開始、全体的にクソほど最悪なんですが、最後の「君は最高の嫁や」とか、もう鼻先めがけて正拳突きしたくなるよね!(ついでにこの旦那、読み進めていくうちにただ単に性欲が強いのとかなりの変態性を持っている且つ高圧的キチガイという最悪な性質が描かれてく)
そんな千穂が出会ったのが、旦那が轢いた相手・高山透。彼は「算学障害(ディスカリキュリア)」という生まれながらの障害を持っていた。この障害は眼には見えず、またあまり認識もされていないので、そういう「いびつさ」が社会的に受け入れられたりはしない。再び透と出会った千穂は算学障害であることを見抜き、そろばんの個人指導を買って出る。少しずつそろばんを教わり、教える日々が続くが、旦那は千穂が浮気をしているのではないかと疑い始める。浮気を疑われた千穂はこれまでの不満をすべて吐き出し、義母を殺して透のもとに走る。そして二人の逃避行が始まるのだった。しかし透には算学障害以外に、自らの生い立ちと過去にも苦しみがあり……。
……というのが、物語の始まり。

この物語は主人公の千穂から見ると「結婚生活に疲れ、義母を殺して逃げた女の逃避行」である。そして、もう一人の主人公、新藤賢治に焦点を当てると、「13年前に妻を殺された理由を知るために、かつて世話をした少年を求めて行動する」老人の物語になっている。
そこに千穂の逃避行の相手である「高山透」の過去、賢治が追う「大西麗」がかつて起こした事件が息が詰まる程濃密に絡まっていく。
物語の最後に。「このまま逃がすことが出来たらどんなにいいだろう」「こんなに罪を重ねていても、まだ自分はどうにかしてやりたいと思ってしまう」と、賢治の目線で書かれた文章がある。
最初は「高山透」という人物が、ディスカリキュリアではあるけれど、ただ手が早くて無口で、少し薄気味悪い人物のように見える。だけどだんだん読み進めるうちに、透に対して、私はこう思い始めてまう。「お前は死体じゃない!もっと熱くなれよ!!」そして、賢治と同じように、「こいつをなんとかしてやりたい」「こいつが救われてほしい」と。
でも彼が救われるためには、法が変わらなくてはならない。そして彼が助かるために変えられる法は、未来永劫存在しないと断言できる。
だから苦しく、切なさを感じるのかもしれないし、最後の千穂の決断が「後味わりぃいいい!!!!!」と思うのかもしれない。


万人に勧められるか、と言われたらそれはノー。ぶっちゃけ遠田さんの作品は「月桃夜」以外は勧めづらい。(「冬雷」は「月桃夜」が好きな方は大丈夫かな、と思うぐらい)
だけど、私はいろんな人に「遠田さんの作品を読んでほしい」と思ってしまうのだ。
どうか透が、あれ以上に美しい蓮の花を見られますように。

読まれる際は自己責任で。
「蓮の数式」、あえていろんな方にお勧め致します。

篠原美希「ヴァチカン図書館の裏蔵書」

篠原美希「ヴァチカン図書館の裏蔵書」新潮文庫nex

厳戒区域の秘密文書に、聖地を揺るがす闇が── ローマ大学に留学中の玄須 聖人は、教授の依頼でヴァチカン秘密記録保管所を訪れ、企画展に向けて幻の資料を探すことに。その頃、ドイツとオーストリア魔女狩りを彷彿とさせる猟奇殺人が起こる。悪魔信仰者の存在がちらつくなか、疑惑の目は教皇庁にも向けられる。図書館の膨大な蔵書に謎を解く鍵があると調べ始める聖人と神父のマリク。だが、事件の真相は意外なところに……
http://www.shinchosha.co.jp/book/180105/

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まず、この表紙のカワイイ可愛い青年が主人公で27歳だということを重々に熟知してから読み進めていただきい。
そしてずっと読んでいると「こいつハタチぐらいじゃねえのー?」と思うぐらい可愛らしく、そこで若干の戸惑いも覚え、だんだんと「こんなかわいいアラサーおるか!!!」と突っ込みたくなること請け合いなのですとだけ最初に言っておきます。そしてこのカワイイアラサーがローマ大学の博士課程という設定上は超絶優秀なのですが、その優秀さを本人は作中でまっったく発揮せず、むしろ本人はぽやぽやしてふわふわしているうちに物語が進んでいき(彼が持つ能力的なものは多々発揮されました)、問題を提唱し展開し解決していったのはダビデ像のごとき美貌を持つ切れ味鋭き(そして戦闘能力も持ち合わせた)マリク神父と、行動力と洞察力を持った主人公のほぼ保護者になっている新聞記者である斉木兄貴(兄貴というのはあまり比喩ではなく、斉木と主人公の関係は個人的にリリアン女学園のスールのような関係だと踏んでいる)で、主人公はぽやぽやしているうちに犯人に拉致られて監禁されて死にかけていたところを颯爽と現れたマリクに助けられ、ちょ、お前!!wwwと突っ込みたくなるんですが、それももうマリク神父が優しくてかっこいいし主人公が可愛いからもう許す……というとりとめのないことはともかく。
「ヴァチカンに保存されている文書」「ドイツ・オーストリアで現代の魔女狩りのような事件が発覚」「ベナンダンディ」「悪魔信仰」等々、カトリックキリスト教文化に興味を持つ方には非常にそそられるキーワードが沢山あり、キリスト教やヴァチカンの保存文書に関する知識等はかなり楽しんで読めます。文章がさらっとしているので、その分難解に感じる暇がなく受けれられる、というのもある気がします。

で、何がこれツボだったかっていうと、主人公聖人と、なし崩し的に聖人の保護者になったマリク神父。の関係。
地の文で聖人のことをなんて書いてあるって、「小鹿のようにしなやかな体つきをもちながら動きがどこか子パンダのような愛嬌がある青年」とあるんですよ。また物語の終盤、斉木が「こいつの取り柄といえば男にしてはきれいな肌」と、もはや27歳の青年に対しての褒め言葉になっていない褒め言葉で書いてあるのである。いいぞもっとやれ。
そしてマリク神父である。
このマリク神父が「ダビデ像のごとき美貌の持ち主」であり「ヴァチカンでの問題解決役」でもある人物でもあるのですが、神父であるが故キリスト教社会の中でずっと生きてきた人間です。また、物語開始から聖人はマリクにとって「押し付けられたもの」でありました。だから聖人に対して厳しめに関わってきましたが、物語の終盤のマリクの一言でこの二人の関係は変わる。

「世界に一人ぐらい、私を神父として扱わない人間がいてくれてもいいのではないかと思っています」
……すみません、このセリフにニヤニヤが止まりませんでしたよ!!!!!!!


そんなわけで私は聖人と聖人の「友達」になったダビデことマリク神父のやりとり及び斉木兄貴の過保護っぷりがもっと読みたいので新潮文庫nex様続編お願いいたします。だってこれ、まだ聖人が何故夢を見るのか、とか解決されてないよ!何か登場人物こんな感じですっていう紹介で終わっちゃってるんだもん! あと2冊は最低でも出ないと困るよ!!!!!!!!!続刊でなかったら、私のこの興奮をどう処理してくれるんだ!!!!!!!お願いだ新潮社nex!!!!!!

ヴァシィ章絵「ワーホリ任侠伝」

ヴァシィ章絵「ワーホリ任侠伝」講談社文庫

週末は六本木でクラブ活動にいそしむ商社OLのヒナコ。念願のワーキングホリデー資金捻出のために始めたキャバ嬢バイトが、彼女の波瀾万丈の始まりだった。運命の出会いと絶望、そしてヤクザに追われて海外脱出……。純情&エロティックに全力疾走する、パワフル青春小説。(講談社文庫)

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※注 この小説は決してワーキングホリデーに行きたい人・憧れている人に参考になるような内容は全くなく、むしろ参考にするなという内容は盛りだくさんになっております、とだけ一言添えておきます。


人生の奈落に突き進め!!!!
一流商社のOLのヒナコ(短大卒で一流商社就職ってすごくね?って思うのですが)は平日の昼夜は仕事、週末は六本木でクラブ活動にいそしんでいる。高校の時から留学したかった彼女は仕事と並行してキャバ嬢のバイトを始める。このヒナコがパリス・ヒルトンっていうのも、ハードカバー版が出版された2006年という時代を映しているみたいでいいですね。
しかしそこから、彼女の人生が一変。訳アリのイケメンと付き合い始める→イケメンはヤクザの親分の愛人の子供→そいつが闘争に巻き込まれて死ぬ→傷心のヒナコはキャバ嬢をやめて歌舞伎町でデリヘル嬢になる→遊んでいた歌舞伎町でニッキー・ヒルトン似の男の子がヒナコの妹分になる→商社のセクハラ変態先輩がデリ嬢ヒナコの客として現れる→先輩を沈めて(性的にも暴力的にも)商社を退職→訳アリのイケメンの家のもっと訳アリの変態クソ野郎に狙われて、その日のうちにニッキー・ヒルトン似の男の子と一緒にオークランドに夜逃げオークランドでなし崩し的にワーキングホリデー開始→……と思ったら、やっていることはデリバリーヘルスの斡旋……と、これ以上書くとネタバレになるのですが、なし崩し的に人生の奈落に突っ込んでいっている感が凄い。さらに他人の人生も多少巻き込んでいる感も凄い。
しかしこの話のすごいところは、突き進んでいっているところが決して明るい方向ではないにも関わらず、物語の持つ得体のしれないパワーによって滅茶苦茶なジェットコースタームービーになっているところと、ヒナコというキャラクターが意外に純情でパワフルにかわいらしいところで、それがさらっと書いているとてつもなくひどい部分が深刻に思えてこないという不思議な部分だ。
もうこの話は何も考えずに、ページの3分の1は確実にヤッてるけどヒナコが動いているところを突っ込みながら見守ればよろしい。人生に行き詰まりを感じている人にこそ読んでほしい。物語の持つ得体のしれないパワーにやられてください。なし崩し的に人生を進めていくヒナコのパワフルさにやられてください。