最高のフラメンタンゴ、「ビエホス・アイレス」


タンゴとフィギュアの日記、まだもう少し(かなり?)続きます。
前回はピアソラを滑った選手と、そのプログラムの紹介でした。今回はひとつのプログラムに絞ってまたクドく書いて行きたいと思います。例によって、あくまでワタクシの主観と印象だけのお話です。なので「ちげええんだあああ!」という他者の意見も以下略。
今回はジェレミー・アボットの「ビエホス・アイレス」についてさらに例によってクドく語っていきます。


バンクーバー五輪アメリカ男子3人衆で一番誰が好きかと聞かれたら、ワタクシは迷わずアボットと答えます。いや、薔薇の国の王子ことジョニーも好きですけれど!!
10−11シーズンの最高プロアボットの「ライフ・イズ・ビューティフル」だと思っているのですが、昨シーズンでSP・フリー両方に良プロを持ってきたのは以外に少なかった。アボットはSP・フリー両方が良プロだった数少ない選手でした。前の日記で「フラメンコ、タンゴ、マンボなどの情熱系のダンスが多かったけれど良プロは少なかった」と書きました。(クセーニャの「ディデュリア・フラメンコ」は良かった)そんな中、アボットの「ビエホス・アイレス」こそ最高の10−11シーズン最高の「フラメンタンゴ」だと信じてやみません。(ちなみにランキング除外したのは「一人の選手SP・FSで一プロ」と決めていたので……)
大ちゃんのマンボをはじめとして、10−11シーズンはタンゴ、フラメンコなどのプログラムが多かったなぁと思います。その中で、アボットの「ビエホス・アイレス」は、個人的にはとっても新鮮でした。
ワタクシの印象の話ですけれども、大ちゃんの滑りは「ねっとり」、小塚君やPちゃんの滑りは「つるつる」、そしてアボットの滑りは「さらさら」なんですよ! こう、何と言いましょうか、「端正」と一言で表しましょうか、一筆書きみたいな、と言いましょうか、細い線の上をよどみなく動いて行く感じと言いましょうか。よくワタクシは「繊細なガラス細工を見ているような」と形容することがあるのです。
ですけれど、繊細で丁寧だけど、悪く言えば男子にしては線が細すぎる。滑りは大きいけれども、やっぱり「細さ」を感じるのは否めなかったです。
で、今回のフラメンタンゴです。



全米選手権のSP
振り付け師はアントニオ・ナハロ。現役フラメンコダンサーで、ランビエールの「ポエタ」を振り付けたコレオグラファーだと言えばわかりやすいかもしれない。

これがランビエールの「ポエタ」
アイスショー版はフラメンコダンサーが後方支援して一緒に踊る……という半端のなさ。

ワタクシは「ビエホス・アイレス」を見るまでアボットが「どれだけ踊れるのか」というのがよくわかりませんでした。基本的にアボットは「音を拾える、滑れる、音楽表現力がある」という選手だと思っていたのですが、「踊る」となると話は別です。3拍子のワルツとも違う独特の「フラメンコ」「タンゴ」のリズムをどう拾うか、どう表現してくるのかなーというのが超楽しみだったのです。
それが、いやぁ……。何と言いましょうか。この胃のあたりまでシャツがはだけた胸チラにノックダウンされた人はワタクシだけではないと断言します。……い、いるよね?
まぁそんな胸チラはともかくとして。ワタクシこのプログラム、凄く新鮮に見えたのですよ。多分、「ここまで踊れる選手だとは思わなかった!」というのもあるんです。初めて見たのが、韓国でのアイスショーでの演技なのですが、その時「アレ? こんなに逞しい選手だったっけ!?」と思ったのを覚えてます。
このプログラムの何が良いって、楽曲自体がシリアスで緊張感があるものだけど、その中で、「タメ」とか「粘り」を表現するのが巧いところだと思うのです。こう、トランジッションのところに「これでもか!」ってぐらいつなぎいれますけれども、そういう所でも「フラメンコらしい」とか「タンゴらしい」というのはおかしいかもしれませんが、ちょっとしたつなぎの間でもこういったプログラムでありがちの手のバタバタ感やせわしない感じが全然しない。それでいて「セクシー」です。
ワタクシはこのプロを見て、繊細だとばかり見ていたアボットの演技に対する自分の意識が少し変わったように思います。スケールが大きくて一筆書きのように綺麗なスケーティングの中に、逞しさも増したなぁ、とも思うのです。
あと、曲調が基本的に緊張感やシリアスさがあるので、やたらと多かった、むさくるしい(ごめんね)感のあるラテン系の楽曲から一線を画している気もしました。緊張感ある楽曲の中に「タメ」「ねばり」そして「香る色気」を入れきったアボットに、お見事! と言いたいよ!



フリー「ライフ・イズ・ビューティフル
N杯、ロステレコム、全米、4CC。出た大会全てにジャンプミスがあったからか、本当にミスさえなければ……と思う。だけど、ミスがあっても、少なくともワタクシの中では10−11シーズンの「ナンバーワンプログラム」です。ワタクシの周りでは衣裳が青○とかコ○カとか言われてたけど。とっても清涼感のあるプログラムです。
デヴィッド・ウィルソンもいい仕事したなー。ホント。ヨナちゃんのプログラムが全部私の肌に合わなかったからか、あんまりウィルソンの振り付けが好きになれなかったのよ。これからは偏見なくすよウィルソン。


にしてもアボットももう26歳か。ブレイクが遅かったからか、そんな感じに全然見えず……。逆に言えば、アボットメンショフさんは、「遅咲き? 20代後半? ベテラン? 体力? ……上等じゃ!」という、20後半になってもバリバリやっていけんよ、というか、そういう男子シングルの可能性や、基礎が固まっていれば十分長く競技生活出来るよ、というのを見せてくれているのかもしれない。


ちなみにこの記事自体、某所(つかミクシ―)で書いたことの焼き増しだけど、本当に、自分がここまでアボットの演技が好きだとは思わなかったYO!
昔プルさんがジョニーに「クワドが決まれば世界王者だ!」と言ったらしいが、私はアボットに言いたい。「クワドが決まれば世界王者だ!」