フィギュアでのタンゴの表現


タンゴとフィギュアについての日記、その続きです。前々回はピアソラを滑ったスケーター、前回はアボットの「ビエホス・アイレス」について書きました。
で、「タンゴ」をスケートで魅せるのはステップだけではない。というのが私の意見です。たとえタンゴの見せ場にステップを持ってきたとしても、ちゃんと踏めていなければ見せ場にもなりませんし、何もステップを見せ場に持ってくる必要はない、と思うのです。


誤解されやすいかもしれませんが、先ずはこちらをどうぞ。例によって、大ちゃんです。

高橋大輔選手の「eye」。10年トリノワールドでの演技。
このプログラムの見せ場は何と言ってもステップですが、個人的にはスケーティングに注目してください。前にも言いましたが私が思う大ちゃんのスケーティングは「ねっとり感」があるんです。振り付け師の宮本賢二さんが、手術後の彼のスケーティングが変わった、凄い柔らかいものをぐっと踏みつけたような伸縮性がある、と仰っていました。
アルゼンチンタンゴとは違いますが、このうねるようなバンドネオンの音に負けないスケーティング、というのは表現をする以上確かに必要です。そして大ちゃんのこの「ねっとり感」というのは決して負けてはいない、寧ろハマりにハマった、と言っていいのではないでしょうか。

他にもこれ。09年ロスワールドでの浅田真央選手のエキシビション

「ポル・ウナ・カベサ」
真央ちゃんのタンゴはどっちかっていうと「コンチネンタルタンゴ」ですかね。とっても品のある、可愛らしい女性のタンゴ。ファンの間でも結構評判になったプログラムじゃないかと思います。「タラソワが振り付けたタンゴを真央が踊ると最高」というのも頷けます。


しかしやっぱり「ステップなし」でのタンゴは難しいのかーと思った時、ちょっと頭に引っかかった演技があった。ステップ以外、「見せ場」にステップを持ってこないタンゴプロがあったような、誰だっけと思いだしてみると、それは私にはこのお方しかいませんでした。


エレーナ・リアシェンコ様
ただ華やかなだけではなく、あなたのスケーティングが好きです。たとえ勝てなくても、私はあなたの一番のファン。


そう、このお方。リレハンメルからトリノまでの四大会の五輪に出場、オクサナ・バイウル引退後のウクライナ女子を支えたエレーナ・リアシェンコ様。すっごい息の長いリアシェンコ様なのですが、ウクライナにはまだ、彼女を継ぐ選手が出てきていないのが残念。
私がフィギュアにハマるきっかけは05年NHK杯中野友加里の「ドン・キホーテ」「アメイジング・グレイス」なのですが、その時に一緒に台乗りしたリアシェンコ様もきっかけの一つに入っていたのでした。いや、こんなお美しいお方がいていいのかと(苦笑)。


で、そんな彼女が魅せてくれたのが04年ユーロでのエキシビション

アルゼンチンタンゴやコンチネンタルタンゴ、ではなく、映画「ムーランルージュ」の楽曲である「ロクサーヌのタンゴ」。リアシェンコ様、滑りにとっても雰囲気があるお方、というか、プログラムに雰囲気を作るのがとても上手いお方(ああ、とっても失礼なことを言っている気がする)。この「ロクサーヌのタンゴ」でもストレートラインステップ何かのステップなしに、十分に彼女の持つ女性らしさ、タンゴらしさというのを見せてくれますね。


この「ロクサーヌのタンゴ」、フィギュアでも使う選手は結構いますが、(大ちゃんや前の日記でのヴォロ君とか)、女子では結構珍しいですかね。キムヨナ選手がシニア移行後に使っていましたが、彼女のは子供のあがき、というか、無理して妖艶したがってる、みたいに思えたので個人的にはマイナスです。あげひばりはよかったのにねー。思えばその時から私はヨナ選手の演技が、大っ嫌いでした(苦笑)。


そんなわけで「滑りの質」「プログラムとしての雰囲気」が伴えば、ステップがなくても十分に「タンゴ」として魅せることができる、というのがワタクシの持論です。滑りの質は大ちゃん、プログラムとしての雰囲気はリアシェンコ様ですな。