私が愛したラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番」

いつか書こう、と思った記事をば。
今年はもうソチシーズン。オリンピックシーズンはなんだかんだ、王道的な曲が集まるというのは容易に予想がつくのですが。その中で、真っ先にプログラムの情報を流したのが浅田真央選手でした。
SPがノクターン2番で、FSがラフマニノフのピアコン2番。どちらも王道な選曲ですが、特に個人的に「え、これやるの?」と思ったのがフリー。
ラフマニ2番は個人的にも好きな曲ですし(特に3楽章が好き)、いいプログラムもたくさん知っているだけにちょっとだけ複雑、という思いです。
今回は、私が愛したラフマニノフ2番、ということで、五輪を限定せずに特に好きなプログラムを5つほど。


まずはペア。リレハンメル五輪のナタリア・ミシュクテノク&アルトゥール・ドミトリエフ組のフリー。
ニゾンがきれいで、振り付けと振り付けの間に途切れがない。一つ一つの技の完成度がパねぇです。こういうゆったりしたスケーティングのペアが結構好きだったりします。

ちなみに私が一番好きな振り付けは、中盤2楽章のアラベスクスパイラルの女性を男性がイーグルで支える所です。


1996年の世界選手権、ルーチェンの演技。主にこれは2楽章かな。美しいプログラム。

振り付けはサンドラ・ベジック。2位なのが不当なのでは、という声をいまだにききます。
昨今の振り付けに難癖をつけるわけではありませんが、このルルの演技を見ると、またベジックの振り付けがみたいなぁと思う今日この頃です。さりげなく美しいプログラムを作るのが、本当にうまいので。


アレクサンドル・アブトのユーロ2002。一世一代の大演技です。

男性的な優雅、というのが本当に似合う選手だと思ってます。キャメルスピンの映えること映えること。
私がアブトのスケーティングで好きなのは、力強いスケーティング(私はPちゃんやこづか君はつるつるスケーティング)だけど隠すことのできない優雅さが同居している、というところなのかもしれません。そしてこのラフマニのプログラムは彼の良いところを余すところなく見せきった、と思っています。
アブトが1位だったのでは? という声をいまだに聞く、力強くも美しい演技。


トリノ五輪のシーズンは、実は大ちゃんよりもぐりえんぬの方が私の心に残っております。

村主章枝さんのトリノ五輪
途中1回、トリプルを2回転にしましたが、スピードは落ちてません。そういや田村さんの著書でこの演技「途中いくつか3回転を2回転にしたが」と書いてありましたが、1回だけです1回だけ。間違えないでおくれー。振り付けはローリー・ニコル


最後。セルゲイ・ヴォロノフの2010−2011シーズンロシア選手権FS。
これはいろいろ思い出深いので長くなります。なんせ、紹介した演技中リアルタイムで見た唯一の演技なので。

実はセルゲイさんはこの数シーズン前に、1楽章をショートで使っていて(結構珍しい)ショート版も結構好きなのですが、今回はこっちを紹介。このシーズンほとんど国際大会に出られなかったので、知らない人も多いと思うので。
ここからはワタクシの想像上の上で書くので注意していただきたいのですが。
この演技を見て私がいいな、と思ったのは、彼が今自分のいる位置を決して否定していない、というのがわかるところです。
このシーズン、怪我の影響でこのプログラムを国際大会で演じることはほとんどありませんでした。GPシリーズの緒戦、中国大会でフリーでクワドを飛んだ時、足の怪我を悪化させて途中棄権。その後のエリック杯も欠場を余儀なくされます。

アスリートにとって、自分の得意なものができない、挑戦したくてもできない、という状況は、とても歯がゆいものだと思います。飛ばない、と決めることは勇気がいります。ですが、無茶な挑戦をしてほかのことが発揮できなくなる、というのはお話になりません。
……ナショナルの演技には、クワドも、フリップもルッツもありません。ですが、ジャンプもすべて決めて、スピンのレベルもちゃんととった。
挑戦したくてもできないときもある。でもそういう時は、結局は自分ができる最大限のことをやるしかない。「挑戦から逃げた」演技ではなく、「飛べないならほかのところをきっちりとやった」、つまり、その時にやるべきことをやった人間の演技の演技です。
総合4位で、技術点はトップでした。全てのものを丁寧に行った美しい演技です。




………さて、いろいろラフマニ2番を紹介してきましたが如何でしたでしょうか。
今季、浅田さんのほかにもまた誰かやる人がいそうな気がします。カルメントゥーランドットと並んで五輪の勝負曲としても名高いので。
今シーズンはどんな2番が見ることができるのでしょうか。今から楽しみです。