深見真「姫騎士征服戦争」

深見真「姫騎士征服戦争」富士見ファンタジア文庫

魔族の末裔が支配する帝国で「祖魔の姫騎士」と呼ばれるルアナには野望があった。それは、敵国の美しい姫騎士を捕らえ、いじめ、屈服させること。そんな彼女に従うのは、目つきは悪いが彼女に忠実な従騎士・ベニー、変態アサシン・カナタ、インテリオークのイアン軍曹。くせ者揃いの部下たちに支えられ、破竹の勢いで姫騎士を堕としていくルアナ軍団の行く末は―この戦に正義も大義もない。ただあるのは、欲望のみ!姫騎士の姫騎士による姫騎士征服ファンタジーが、今ここに開戦!
ファンタジア文庫の紹介文より)

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最近の読書はほぼ積読で買ってはため買っては溜めを繰り返していたので、積読していた本をとりあえず読む。再び深見真先生。サイコパスの劇場版の直前に発売されたものです。

………姫騎士これくしょんって艦これじゃねーか!!(当時読んだ人間がしたであろう突っ込みを今更してみる)

お話としては「動力鎧で戦う姫騎士(主人公ルアナ)がやっぱり姫騎士をとらえていじめて屈服させてこれくしょんにする。そのために周りのスタッフがあれこれ頑張る」というものです。ざっくり書きましたが嘘は書いていない。
お話のメインとなるのが「姫騎士をとらえていじめて屈服させ」のところなんですが、この「とらえて以下略」の部分が地下室で微エロ微拷問。割と直球にエロいことがあります。どんなことがあるかと思ったら「祖国と家に捨てられた姫騎士をくすぐり攻めの拷問で神経をイカれさせる」「姉妹のこじれすぎて絡まった糸を優しくときほぐすハートフル拷問」などがあります。嘘は書いてない。

うん。この本は、愛だね。

何でしょうかこのハートフル拷問は。 深見先生、狙ってやったのでしょうか。
「ちょっとかわいいアイアンメイデン」の1話で、「拷問に第三者はいない。される側かする側か」と言ってますが、この本はまさしく「屈服する側の人間」と「される側の人間」がメインです。そして、「拷問をする」側のルアナには(姫騎士を屈服させてこれくしょんにしたいという欲望しかありませんがその欲望がもうびんびんにありつつも)愛があります。
屈服する人間というのは愛がなくてはいけません。屈服される人間は支配される喜びを感じる種類の人間ですが、屈服する人間からの愛がなくてはその喜びを感じることがない……のではないかと思います。その幸せを感じちゃっているのがマリカやアナスイなんですよねー。
あと「とりあえずみんな楽しそうではある」に、この家とルアナのやっていることは異常なんだけどみんな楽しそうだからいいじゃない!というざっくり幸せで纏めちゃった感が雑でいいです。

まあでもこれ、「姫騎士ハーレムでウハウハしている姫騎士」の物語……なんですが、「主の姫騎士のために姫騎士ハーレムをつくるのに頑張っている最強の従者」が実は主人公だったのでは……と思ったり。お話としてはかなりアンバランスなんですよね。やっぱりベニーが最強すぎて浮いている感が否めないし、ベニーの最強さ加減がべつの話になっちゃってるなぁというか、……ベニーが戦い始めたら、怪我もあったけどルアナがフェードアウトしてしまったのが悔しい。もっと戦闘シーンでルアナの活躍が見たかったなぁ。
そこはルアナが戦ってでしょ!!!

でもまぁ、こんな深見真作品もたまにはいいものです。だってなんといっても、拷問する側もされる側もちょっと楽しそうだもんね!!
ゴルゴダ」「ブラッドバス」「ライフルバード」「ヴァイス」などのハードな深見真ではなく、ライトエロライト拷問全体的にライトタッチな深見真作品。深見先生の作品の、血と硝煙の匂いを嗅ぎすぎたらこちらにこよう。