ヴァシィ章絵「ワーホリ任侠伝」

ヴァシィ章絵「ワーホリ任侠伝」講談社文庫

週末は六本木でクラブ活動にいそしむ商社OLのヒナコ。念願のワーキングホリデー資金捻出のために始めたキャバ嬢バイトが、彼女の波瀾万丈の始まりだった。運命の出会いと絶望、そしてヤクザに追われて海外脱出……。純情&エロティックに全力疾走する、パワフル青春小説。(講談社文庫)

* * *

※注 この小説は決してワーキングホリデーに行きたい人・憧れている人に参考になるような内容は全くなく、むしろ参考にするなという内容は盛りだくさんになっております、とだけ一言添えておきます。


人生の奈落に突き進め!!!!
一流商社のOLのヒナコ(短大卒で一流商社就職ってすごくね?って思うのですが)は平日の昼夜は仕事、週末は六本木でクラブ活動にいそしんでいる。高校の時から留学したかった彼女は仕事と並行してキャバ嬢のバイトを始める。このヒナコがパリス・ヒルトンっていうのも、ハードカバー版が出版された2006年という時代を映しているみたいでいいですね。
しかしそこから、彼女の人生が一変。訳アリのイケメンと付き合い始める→イケメンはヤクザの親分の愛人の子供→そいつが闘争に巻き込まれて死ぬ→傷心のヒナコはキャバ嬢をやめて歌舞伎町でデリヘル嬢になる→遊んでいた歌舞伎町でニッキー・ヒルトン似の男の子がヒナコの妹分になる→商社のセクハラ変態先輩がデリ嬢ヒナコの客として現れる→先輩を沈めて(性的にも暴力的にも)商社を退職→訳アリのイケメンの家のもっと訳アリの変態クソ野郎に狙われて、その日のうちにニッキー・ヒルトン似の男の子と一緒にオークランドに夜逃げオークランドでなし崩し的にワーキングホリデー開始→……と思ったら、やっていることはデリバリーヘルスの斡旋……と、これ以上書くとネタバレになるのですが、なし崩し的に人生の奈落に突っ込んでいっている感が凄い。さらに他人の人生も多少巻き込んでいる感も凄い。
しかしこの話のすごいところは、突き進んでいっているところが決して明るい方向ではないにも関わらず、物語の持つ得体のしれないパワーによって滅茶苦茶なジェットコースタームービーになっているところと、ヒナコというキャラクターが意外に純情でパワフルにかわいらしいところで、それがさらっと書いているとてつもなくひどい部分が深刻に思えてこないという不思議な部分だ。
もうこの話は何も考えずに、ページの3分の1は確実にヤッてるけどヒナコが動いているところを突っ込みながら見守ればよろしい。人生に行き詰まりを感じている人にこそ読んでほしい。物語の持つ得体のしれないパワーにやられてください。なし崩し的に人生を進めていくヒナコのパワフルさにやられてください。