馬場康志「ゴロセウム」


馬場康志「ゴロセウム」

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このブログではあまり触れていませんが、ちょっと前までヤングマガジンで連載されていた「空手小公子小日向海流」という漫画が大好きでした。だって綺麗な絵と格闘技ですよ? 己の肉体のみで戦う格闘家のものがたりですよ? 美女もイケメンも老人ももりもり出てくるギャグ格闘漫画ですよ? 大好きです。
その「空手小公子小日向海流」ですが、この漫画は元々は格闘技というよりも、嶺南大学という大学を舞台にし、鏑木流空手という架空の流派を扱う空手部漫画でした。いじめられっ子の体操部員の海流が、鏑木流空手を扱う第二空手部の無類の喧嘩好きの野獣・武藤竜二に助けられたことにより空手の道に入り、その道にのめり込んでいく……というのが、第一部。
第二部では第二空手部の沖縄合宿の様子が描かれ、
第三部では鏑木流空手の全国大会が開かれ武藤や海流をはじめとして、濱田カオルやジェラール・ベルトラン等の多流派から乗り込んできた面々との熱戦が繰り広げらる。
そして第四部では、全国大会後、鏑木流空手総裁の不祥事(ダイエット詐欺)から第二空手部は廃部になり鏑木流空手同好会に格下げされてしまう。武藤は武者修行へと旅たち、部員たちは道場を追われた中でも活動を続けていた。全国大会から1年後。鏑木流の全国大会がなくなったため試合は他流試合メインに移行、さらに主将の南が引退・卒業し、三年となった小日向たち活躍を描く。
第四部では他流試合やプロ試合が多くなるので、「大学を舞台にした空手漫画」というよりも「ガチモンの格闘技漫画」として見るのが正しくなってくるかも。その他も第四部は色々あるんですよ。南さんがAV男優としてデヴューされそうになったり南さん試合中月給2万5千円なのをバラされたりカオルちゃんのエビチリパンチが炸裂したり南さんの株が初期とは比べ物にならない程上がって行ったりとかもう、色々。
そんなこんなで全50巻、最終巻ではチャンピオンベルトを巻く海流の姿が表紙になり……これに続編があります。2年後の、今度は嶺南高校を舞台にした空手漫画。「空手小公子物語」というのがそれです。ただ、この「物語〜」の方はイマイチ振るわず、単行本の売り上げも伸びず(作者談)最終的には打ち切りで終わりになってしまいました。この頃馬場先生が色々呟いていたなぁ……(遠い目)。ツイッターで色々暴露して、この漫画は打ち切られました。
……………その数か月後。ヤングマガジンから雑誌を変え、隔月刊誌ネメシスで連載を開始。
その名も「ゴロセウム」。
…………………前置きが長くなりましたが、今回は「ステゴロの格闘技と筋肉と綺麗なお姉ちゃんを見たい」という人向け漫画レビューです。

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人類にもたらされた謎の物質「平和回路(ピースメーカー)」により、世界に新たな秩序がもたらされた。弾丸、ナイフ、ミサイル、核、毒ガス、生物兵器など、およそ“平和的”でないものはすべて旧時代の遺物と化した。今や優れた肉体を持つステゴロの格闘家のみが最強の兵器となったのだ! 世界は巨大なコロシアムと化し、勢力図は塗り替えられた。そんな強者たちの「猟域」に足を踏み入れる少女がいた。彼女の名はサーシャ・グンダレンコ。血の標は彼女をどこへ導こうというのか!? 馬場康誌が描く新世界肉弾アクション、堂々開幕!!
http://kc.kodansha.co.jp/product?isbn=9784063765694
講談社による1巻の紹介文

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………………………LIZARD KINGかなこれ?

中身は格闘技!オカルト!歴史を背景にSF!な感じに、空手小公子の時もあった馬場先生の軽いノリとギャグが合わさっていて、作品全体のテンションが高いです。プー太郎の土方歳三(「ゴロセウムでは平行世界なので土方歳三が生きていたという設定になっている)のひ孫が出てきたり、ロシア王朝を揺るがしたラスプーチンが生きていたり凄い設定。
1巻の中身は、ロシアの「どう見てもあの人」が世界征服の為に14歳の少女を国家レベルで追い掛け回したり、その14歳の少女をアメリカの「どう見てもあの人」がこちら側に引き入れんと「どう見てもあの人」な日本の首相と密談し、その間にその14歳の少女は助けた女の子とデートしたり、その後中国人民解放軍の「どう見てもあの人」がその少女が持つあるものを手に入れる為に襲ってきたりするのが全編。「どう見てもあの人」としか言えないのはまぁ、本編を見て頂きたいのと、全体的に似すぎて肖像権侵害スレスレレベルだから。
そのストーリーの後ろでは名もなきモブの首が飛んだりトラが殺されたり、一人が百人を一気にジャーマンスプレックスしたり、いろいろもうヒドイ。まぁ、一番酷いのはこのレビューなんだけど、とにかく、
拳! 血しぶき! 死体の山!!
……を繰り出し造り上げ築き上げ、その中心にいるのが14歳の最強ロシア美少女というところで、萌えるじゃないか。
一番魅力的なのは何といってもサーシャ。
超強くてカワイイけど見た目はどう見ても成人女性。だけど、中身は全くのおさない少女というそのギャップもまたカワイイ。そんな少女が人知を超えるパワーと性能で敵を鎮めていくのが痛快。


そして何といっても外せないのが、作中のガチムチ度。
ロシアないし世界には、ピースメーカーを装着し、特殊手術で骨格と筋量を倍加させたチェルノボーグと言われる歩く人体破壊兵器がごろごろとしており、それが世界全体が巨大な闘技場になったのだが驚くべきはそのピースメーカーの設定。
このピースメーカーには、銃器類を全て無効にする効果があるだけではなく、老化を含めた体のダメージの回復を行う役割も果たし、年老いても若返らせる機能もある。
……かつてはバリバリの格闘家だった60歳ぐらいのおじいちゃんが、年齢はそのままなんだけど肉体だけ健康的ピーク時を常に保つと言うことも可能なので。
なのでこの作品はジジイでもガチムチです。
開けばガチムチの格闘家がいます。


そんなわけで、最強少女に萌えたい人とガチムチ萌えの人は是非この作品を読むべき!!
三枚揃うと大変なことになるレコードを巡って!最強少女を巡って!ロシアが!日本が!アメリカが動く!!

いやあ今後が楽しみな漫画です。

バケモノの子

一郎彦君がケラケラ笑いながら闇落ちした瞬間、
末期の夜神月を連想して内心ゲラゲラ笑ってしまった私です。
脳内、二十に重なる爆笑。


バケモノの子、見てきました。場所は有楽町。
ツイートでまとめてみたので一部修正しますがさらしてみる。どうでもよくないけど、ツイートだと一郎彦君を一郎丸って打ってた。普通に間違ってるよ!!

バケモノの子まとめ
宮崎あおいのショタボイスのメシウマさ
役所広司の親父のメシウマさ
・一郎彦の闇堕ちが夜神月とシンクロ
・バケモノの世界と人間の世界って、そんなに簡単に行き来可能だったのかよ
・楓ちゃんの存在が浮いている
・熊晢は刀剣男子になったのだ
・一郎彦の家族をもっと掘り下げて欲しかったな。
・一郎彦の惨劇が大型トレーラーの暴走のせいにされていた。哀れ。
・でもあれ、被害総額うん億円になってたよね。それの責任……うおおお。トレーラーの運転手哀れ。
・でも一郎彦のデザインはとても好みです。「僕もいつか、父上のような立派な鼻と牙をもって〜」とキラキラした目で一郎丸が言った時、やめて!君はそのままでいいの!て思うぐらい、一郎彦のデザインは好きです。大事なことだから二回言いました。
・なんかショタ時代と青年期で違う映画かなっ?て思うぐらい変わったなあ。 ・何でキュウタはしょっぱなに図書館いったのか教えて
・本当の親父が見つかるのはいいけど、母方の家族の問題は何一つ話題に上がらないことにもやっとしてる。


個人的に修行やらバケモノのせかいやらの前半部分は楽しめたんだけど、楓ちゃんが登場してからあれっ?て感じになった。何か映画のカラーが変わったなぁと。格闘系の修行アクション見ていたらいきなり君に届けの世界になって一郎彦の闇落ちでデスノを連想させる感じ。ここまで変わるのって、逆に凄いなぁ。
こう見てみると、細田監督の好きな女の子が「黒髪で元気で優しくて綺麗系」な、宮崎あおい桜庭ななみちゃんみたいな感じの女性だったんだなと思い至る。なつきちゃんしかり、今回の楓ちゃんしかり。ただそれって、使いどころが悪いとただの空気ヒロインになっちゃうんだとも感じてしまった。
もやっとする場面もあるし消化不良の所もあるけど、嫌いな作品ではないと言う感じです。特に前半は面白かったし、何よりも宮崎あおいのショタボイスは非常に飯ウマなので、見て、聞いてみる価値は十二分にあります。

あと今回感じたのは、細田監督はしょーねんの鎖骨を見せることが大好きなんだということです。楓ちゃんより連君のが色気がありましたね。特に少年時代の鎖骨がなんとも以下略。

「14−15シーズン このプログラムが凄い!」 投票結果

ツイッターとブログでおっかなびっくり始めたこの企画ですが、色々な方が投票&リツイートしてくださったおかげで、自分でも驚きの票数を集めることが出来ました。票数にして647票。
では早速結果からいきたいと思います。14‐15シーズン、スケオタが選んだ良プログラムはこれだ!
※選手に対しての書き方は、非常に申し訳ないことに自分が書きやすいように書いてしまいました。


1位 小塚崇彦FS「イオ・チ・サロ」振付:ローリー・ニコル 35票
2位 宮原知子FS「ミス・サイゴン」振付:トム・ディクソン 34票
3位 デニス・テンFS「New Impossibilties」振付:ローリー・ニコル 31票
4位 村上佳菜子SP「Think of me」振付:樋口理穂子 27票
5位 羽生結弦SP「バラード1番」振付:ジェフリー・バトル 23票
6位 川口悠子&アレクサンドル・スミルノフ「マンフレッド交響曲」振付:ピーター・チェルニシェフ 21票
7位 エリザヴェータ・トゥクタミシェワSP「ボレロ」振付:ユーリ・スメカロフ 18票
8位 町田樹「ヴァイオリンと管弦楽のためのファンタジア」振付:フィリップ・ミルズ 17票
8位 町田樹交響曲第9番」振付:フィリップ・ミルズ 17票
10位 エリザヴェータ・トゥクタミシェワFS「Batwannis Beek」振付
:ウラジミール・バルナバ 15票

10位 デニス・テン「カルーソ」振付:ローリー・ニコル 15票
10位 ユリア・リプニツカヤSP「メガポリス」振付:イリヤアベルブフ 15票


○ベストテン総括
最終的には宮原フリーと小塚フリーの一騎打ち!競り勝ったのは小塚フリーで、特に全日本フリーに投票多し!日本人選手のプログラムが上位に食い込み、やはり安定のローリー振り付け!カップル競技では川スミのマンフレッドが堂々のランクイン!SP・FSともに票を集めたのは町田・リーザ・デニス。


以下。拙いですが少しばかり解説をば。最初に断っておきますが、トンチンカンなこと言ってたらすみません。



1位 小塚崇彦FS「イオ・チ・サロ」振り付け:ローリー・ニコル 35票

今まで、有香さん、ズウェワ、ウィルソン、シェイリーンと言った名振付師のプログラムを滑ってきた小塚くんでしたが、意外にもローリーとは初めてだったんですね。フジテレビでは「これからも僕はいるよ」という泣けるタイトルで紹介されていました。小塚くんの優雅かつスケールの大きいスケートを強調するような素晴らしいプログラムでした。今シーズンは小塚くんの本来の力を中々発揮することはできませんでしたが、その中でも全日本は2本の四回転を入れ、素晴らしい演技で佐藤信夫コーチの涙を誘いました。この企画でも「全日本選手権のフリー」と特定で投票された方も多数いらっしゃいました。



2位 宮原知子FS「ミス・サイゴン」振り付け:トム・ディクソン 34票

投票期間中、安定して票を伸ばし続けていたのが知子ちゃんの「ミス・サイゴン」でした。知子ちゃんの凛とした雰囲気が際立ち、歌詞が入った中盤〜そ終盤のコレオシークエンスが圧巻のプログラム。これは知子ちゃんの代表作となる一作でしょう。またこのプログラムで凄いのは「A案とB案が駄目か。……ならばC案だ!」と言わんばかりに後半に+3のコンビネーションを持ってきたことでしょうか。(しかも一つは最後のジャンプ)



3位 デニス・テンFS「New inpossiritis」振り付け:ローリー・ニコル 31票

デニス×ローリーのプログラムはここ数シーズン、3シーズン前の「アーティスト」を代表して、安定して良いプログラムを送り出してきました。今回もその安定感は健在で、SP・FSともにランクイン。より票数を集めたのはFS。「カザフスタンとはかくこのような地なのではないか」と思わせるようなプログラムだった、というのは私の個人的な感想。StSq、コレオシークエンスのステップは圧巻。このプログラムで、デニス・テンという選手は人間卒業間近になりました。(寧ろした?)
ついでに言わせて頂ければ、フリーのプログラムは衣装が、特に変わる前のものが最高でした。



4位 村上佳菜子SP「Think of me」振り付け:樋口美穂子 27票

ヴォーカル曲が解禁された今シーズンで人気だったのは「オペラ座の怪人」。三者三様色んなオペラ座があったけど、一番人気は村上佳菜子の「Think of me」(27票)。ちなみにその次に票が集まったのが羽生FS(12票)。この二つが二ケタの票数を集め、他が一桁票でした。もう少しいろんな選手に票がばらけるかなと思ったので、個人的にはちょっと意外でしたね。要因としては、この佳菜子ちゃんの、クリスティーヌの詩情を美しく歌い上げたかのような綺麗なプログラムに票数が集まった、といった感じでしょうか。
尚、かなこちゃんのオペラ座はフリーもありましたが、こちらは世界選手権前と世界選手権からで振り付けが少し変わっていて、「世界選手権版で」という投票もありました。



5位 羽生結弦SP「バラード1番」振り付け:ジェフリー・バトル 23票

「パリの散歩道」は名前の通りパリ、「ノートルダム・ド・パリ」は名前の通りパリ、「オペラ座の怪人」はパリが舞台。じゃあ「羽生選手の今季SPのバラード1番は?」。フレデリック・ショパンがパリ在住中に作った曲でした。
そんなバラード1番を使った羽生のプログラムは、羽生にとって2作目となるバトル振り付けですが……。カウンター3Aイーグル、なんちゅう入り何だルッツからの3―3等、ところどころ振り付けが鬼畜になっていました。
ちなみに全音ピアノピースでのバラ1は最高難易度F。「高い表現にはおのずと高い技術が必要になるもの」というのをまさに体現している1曲であり、バトルが羽生の現段階での表現そして技術を最大限にまで引き出した1作。
惜しいのは振り付けもさることながら、色々あったシーズンの中ですが、クリーンプログラムがなかったことでしょうか。



6位 川口悠子&アレクサンドル・スミルノフ「マンフレッド交響曲」振り付け:ピーター・チェルニシェフ 21票

昨シーズン、怪我に泣かされて五輪を断念せざるを得なかった川スミ組が、今シーズンの原液を続行したのは「このプログラムを滑りたかい一心」だったそうです。チャイコフスキーが作曲したこの曲自体の評価はかなり別れていますが、恐らくこのプログラムでスケオタの間で評価が別れる、ということにはならないではないでしょうか。先述の通り、カップル競技で唯一の10ケタ票を集めました。
SPの「タイスの瞑想曲」から打って変って情熱的なプログラム。特に後半は情熱という単語では生ぬるい、激情と言うのが適切だと個人的には感じます。
このプログラムで復帰の今シーズン。ヨーロッパ選手権で5度年ぶり2度目の優勝を飾り、スケートアメリカではスロー4回転サルコウが認定されました。



7位 エリザヴェータ・トゥクタミシェワSP「ボレロ」振付:ユーリ・スメカロフ 18票

 
ミーシン門下生でボレロ、と言ったら昔のプルシェンコも滑っておりましたが、そのボレロをリーザに進めたのはプルシェンコ、というお話もございます。(ツイッター情報です。明確なソースがありましたらご一報いただけると嬉しいです。)
このシーズン、素晴らしい成績を残し続けたリーザを象徴するようなプログラム。世界選手権ではこのプログラムで、女子で6人目のトリプルアクセル認定がされました。3A、エラーのないルッツ、後半3―3とまさに女帝のジャンプ構成。
オリエンタルな雰囲気を全身から醸し出すFSも人気でした。デニスのFSがカザフスタンの風なら、リーザのFSは中東の踊り子のようですね。



8位 町田樹SP「ヴァイオリンと管弦楽のためのファンタジア」、
FS「交響曲第9番」 振付:フィリップ・ミルズ

このシーズンの全日本で誰もが驚く引退を発表したまっちーのショート・フリー。ここ数年のまっちーのプログラムに対する想い、作り込みようは半端じゃありませんでしたが、特に「第九」は、はじまりの静止から「何か凄いものを見てしまいそうな予感」が凄かったです(個人の感想です)。
また余談ですGPシリーズの時は、FSの曲が流れるたびに、年の瀬じゃないのに年の瀬感が凄かったです。(個人の感想です)



10位 エリザヴェータ・トゥクタミシェワFS「Batwannis Beek」振付
:ウラジミール・バルナバ 15票

 デニス・テン「カルーソ」振付:ローリー・ニコル 15票
 ユリア・リプニツカヤSP「メガポリス」振付:イリヤアベルブフ 15票


デニスのSP、リーザのFSについては少しですが上記で既に述べたのでここではリプニツカヤのSPについて。「愛はまごころ」や「シンドラーのリスト」等、昨シーズン見せたエモーショナルな演技から打って変わり、ピアノをベースにした、陰がありながらも透明な音を用いた曲と、ユリアが本来持っている生真面目な固さがマッチしたプログラムに仕上がっています。スピンだけではなく、アラベスクポジション→2Aなどでも彼女の身体の柔らかさが強調されています。
振付けはイリヤアベルブフ。兄弟子のヴォロノフ、昨年引退したマカロワマカロワ同様ルカヴィツィンコーチに師事するメンショフ等、ロシア選手は彼に結構振り付けを依頼しております。そういえばアベルブフはマカロワでも「メガポリス」の振り付けをしていましたね(12−13シーズン)。それぞれ個性が出ているので、並べてみてみるのも面白いかもしれません。



その他雑感として。
アイスダンスは票数よりも熱量。
日本がシングル大国だからか、男女シングルが主に票を集めましたが、カップル競技も結構票数を頂きました。特筆するのはアイスダンスで、票数よりも個人の熱量。要するに、「絞りきれない!」という嬉しい悲鳴から、一人当たりの投票数が凄まじかったのです。
アイスダンスで一番票数が多かったのはパパダキス&シゼロンのフリー(9票)です。


○カメレンゴ振り付け減った?
今シーズン、あまり見かけなくなったのがカメレンゴ振り付け作品。バンクーバー直後は爆発的に増えましたが、それも落ち着いてきた感じでしょうか。代わりにといっちゃなんですが、このシーズンで増えてきたのがミルズ振り付け。日本選手でも、今井遥ちゃんのフリーがミルズ振り付け作品でした。……減ったと言えばタラソワの振り付けも減りましたね。


○ロシアの振付師はアベルブフとグリンカが光明を見せるか?
相変わらず振付師の本場は北米。そして一番人気はローリー。北米人だけではなく、ズウェワを始めクリロワやカメレンゴもデトロイトにいるので、今や世界的に、海外に振り付けに行く=北米に行く、という構図になっています。そんな中ロシアの選手は、案外本国の振付師に依頼しているパターンが多くみられます。ロシアの振付師と言ったらタラソワがいますが、彼女も昔ほど選手の振り付けに関わっているわけではありません。
ではロシア本国のコリオグラファーは誰がいるのか。ぱっと出てくるのはエフゲニー・プラトフ(ジュベールの「Rise」)、アレクサンドル・ズーリン(村主さんの「ファンタジア」、ヴォロノフの「死の舞踏」)、オレグ・グリンカマカロワの「マリリン・モンロー」)、イリヤアベルブフ(ユリアの「愛はまごころ」「シンドラーのリスト」)等、振り返ってみれば結構名作を作っている方が多いです。特に最近、名前が多いのがグリンカアベルブフ。今季、グリンカレオノワチャップリンを手掛けていて、アベルブフはユリアのメガポリスを振り付けしています。
グリンカはルカヴィツィンコーチのチームに入っている選手の多くを振付けています。一方のアベルブフはダンスファンの間では知られた名前ですね。
振付師としての彼らの作品は、テン世代に入ってからよく見られるようになりました。レオノワのファニーな明るさを出したチャップリン、ユリアの演技力を引き出した「シンドラーのリスト」など、個性や新しさを前面に出し、そのあたり両者の手腕がそれぞれ光っています。
新採点法になってから、ロシアの振り付けはイマイチ対応しきれていない、北米と比べて一歩出遅れている感が否めませんでしたが、そう言われるのも一昔前の話になる日も、そう遠くはないのかもしれません。


最後に。
この企画を纏めるにあたって、改めて選手のプログラムを色々見返してみました。「川スミのマンフレッド最高!」「デニスのフリー最高!」「ジョシュアのフリー美しす!」など、興奮してみてしまっていました。今回特に、小塚くんの全日本フリーを改めて見返したら演技、音楽、実況全てが神でビビります。西岡さんの「さあ、小塚のステップです」という一言が、彼のステップがいかに惹きつけてやまないものだと証明していますね。
ある意味企画者のワタクシ、クロサキが一番楽しい思いをしてしまいました。
重ねて、関わってくださった全ての方々に感謝致します。投票して下さった方、宣伝をリツイートしてくださった方、本当に本当に、ありがとうございました。
15−16シーズンも、ミハルのバトル振り付け(超楽しみ!)、リーザのらんび振り付け(超楽しみ!)などが我々を待っています。

14-15シーズン「このプログラムが凄い!」

世界選手権も終わり、残す大会も国別対抗戦をはじめ僅かになりました。アフターソチシーズンということで、トップ選手がごっそり抜け恐らく抜け殻になったファンも多かった……いや!そんなことはない! そんなことはなかった!寧ろこのシーズンは熱かった! 激動のシーズンだった! 良プログラムもたくさんあった!
そんなシーズンを振り返る意味でも、スケオタの皆様を巻き込んでこんな企画を始めます。題して!


「14‐15シーズン このプログラムが凄い!」


概要
14‐15シーズンにお披露目されたプログラムで「これが良かった!」「このプログラムが最高だった!」「この選手のこの演技最高!」というものを、投票、もしくはコメント形式で募集します。集まった票とコメントは集計してランキングとしてブログで発表致します。皆様の投票やコメントと共に、改めて皆様と共に14‐15シーズンがどんなシーズンだったか、どの選手のどんな演技が印象的だったか、どんなプログラムが魅力的に映ったかを振り返ろうという企画です。


投票対象
14‐15シーズンにアマチュア選手として活躍した全カテゴリーの選手の、SP・FSの全プログラム。
ソチシーズンからの続行プログラム、プロコンペ(MWO)、エキシビションのプログラムは対象外です。
 ※続行プロも投票対象に入れることにします。


投票方法
投票は主にツイッターでお願い致します。
1.ハッシュタグ#1415FSProをつけてツイート
2.イリーナ・クロスカヤ@chiyokoraitoに向けて@ツイート
ツイッターに登録していない方で投票して下さる方は、この記事のコメント欄にてお願い致します。
「○○選手のSP」「○○選手のオペラ座の怪人」などのタイトルを挙げるだけのツイートもしくはコメントでオーケーです。
プログラムの感想等のコメントは任意です。
おひとりあたりの投票に上限はありません。


投票期限
4月末日23時59分迄に致します。


補足
投票件数が20件以下の場合、この企画自体をなかったことにしてB級ライトノベルを紹介するページになります。


それでは皆様、投票をお待ちしております。

「思い出のマーニー」×高橋大輔


Q.「ジブリの中で何が一番好きですか?」
A.「思い出のマーニー

…………いや、その前は「魔女の宅急便」とか「千と千尋の神隠し」とか「天空の城ラピュタ」とか、その辺りを適当に言ってたんですよ。この三作の、なんだかんだで一番見ていて面白いと思うのはラピュタで、千と千尋はしょーねんしょーじょのあの感じ(ぼかして言いました)が好きで、魔女の宅急便は魔法使いの女の子ってだけでポイント高いので、まぁそのあたりを言ってました。
でも「思い出のマーニー」を見た瞬間に、私の中でジブリで一番好きな映画はマーニーになりました。
理由はただ一つです。女の子の絵がとにかくカワイイ。マーニーも杏奈もカワイイ。
特にマーニーがちょうかわいい。
いや、ライムスターの宇多丸さんは「マーニーの存在にあんまり違和感を持たない人は、雰囲気だけを愉しんでるだけでしょ?」みたいにおっしゃっていましたが、そこにカワイイ女の子がいるんだから雰囲気だけを愉しんでもいいじゃないですか。
少なくともネグリジェ姿の金髪碧眼の美少女が月明かりの下で静かに微笑んでるってだけでこの映画は私にとって百点満点ですよ!
あと黒髪の繊細な女の子が若干呼吸困難気味に自己嫌悪に陥ってる姿とかも最高じゃないですか。

要するにマーニーは「ザ・ダイヤモンド!」なんですよ。シータも千尋もキキもさつきちゃんも、「ダイヤモンドの原石」なので、これから磨いて輝く子なんです。(あ、ナウシカは別)宮崎駿さんは「いまどき、金髪の女の子で、お客さんの気を引こうなんて古い!」なんて言っていたそうですが、そういう宮崎駿作品のヒロインって皆黒髪で元気で明るくて女子力の高いダイヤモンドの原石たちじゃないですか。
でもマーニーは、完成された美少女なんですよ。とにかく問答無用に光り輝く繊細なダイヤモンドなんです。
そんな繊細に描かれた(絵的に)マーニーが大好きですよ!


だからこれは、高橋大輔が私に送った誕生日プレゼントだと思っておきます(嘘ばい)


いやあ、大輔はん何やったはるんですか最高ですよ!


振り付けはミヤケン。DVDが発売されるっていうこともあっただろうし、ジブリを滑ったスケーターは大ちゃんが初めてではないけれど(ルー・チェンさん、小塚崇彦選手等)、大ちゃんが滑ったのがマーニーっていうのがステキすぎる。
と同時に、確かに大ちゃんの滑りでジブリを題材にするなら、マーニーの音楽が最上の選択肢なような気がする。何となく、久石譲の音楽ではない気がするんですよ。いや、大ちゃんならどんな音楽でもいけるから全然アリなんだろうけど。根拠はありませんが、大ちゃんの繊細な足さばきとたまに見せる柔らかい表現は、プリシラ・アーンさんのこの曲がマストな気もする。ビートルズやったあとだからかな。


だから私は米ちゃんにもっともっとステキな少女を描いて映画に落として欲しいんだ!

そして大ちゃんにはもっともっと素敵に滑り続けて欲しいんだ!

一度に二つおいしい、そんな動画でした。

「続・宮廷女官ジャクギ」というドラマがある

2011年に中国大陸で大ヒットしたドラマがあります。清朝康熙帝の時代のお話で、タイトルは「宮廷女官ジャクギ」。
現代に生きる歴史好きな平凡な女性、張暁。彼女はある日突然交通事故に合ってしまう。目を覚ますとそこは現代の中国ではなく、300年前の清朝だった。タイムスリップした張暁が、出会ったのは、康熙帝の9人の美しき皇子。そこで現代とのギャップに戸惑いながら、周りに支えられて宮廷女官ジャクギとしての人生を歩んでいく。その中で第4皇子(のちの雍正帝)と第8皇子はジャクギに対し恋愛感情を持ち始め、歴史を知るジャクギは彼らの間で大きく揺れ始める。やがて宮中では康熙帝の跡継ぎ問題が起こり、9人の皇子たちによる王位争いが始まる。歴史は変わるのか、現代には帰れるのか。……というのが、大まかな内容でございます。

……ラブロマンスっていうよりも中国発ネオロマンスって言った方が個人的にはしっくりきますが、確かに面白いです。前半部分のコミカルさは見ていて気持ちのいいものだったし(その分後半が怒濤の展開なのだが)、俳優陣もとてもいい。ニッキー・ウーに、リウ・シーシー、この二人の存在感が素晴らしいですし、なんといっても13皇子のユアン・ホンなんてベストオブ辮髪ですね。最後の34話なんて、もろに泣かせるためにお話作ってるなぁとか思いながらみていたのもいい思い出です。
結末のネタバレをしてしまうと、清王朝でのジャクギは亡くなり、亡くなって張暁の意識は現代に戻る。目覚めた張暁は康熙帝の息子たちの結末をネットで調べる。9、8皇子は獄死。10皇子は乾隆帝になってから釈放。14皇子も軟禁されたまま生涯を終える。13皇子も42歳の若さで亡くなり、やがて4皇子=雍正帝も臨終を迎える。
退院した張暁は、博物館の“清代文物展”を見に行く。ジャクギはいなかったのだろうか。私はそこで存在したのだろうか。その思いで一枚の絵を見つめ、そこで出会ったのは……。というところで終わります。
…これが「宮廷女官ジャクギ」という「タイムスリップした女性とその時代の人物とのラブロマンス」を描いた最高の作品でした。

さて、ここまでが前置きです。


その「宮廷女官ジャクギ」の続編が何とございます。タイトルを「続・宮廷女官ジャクギ 〜輪廻の恋」。
続編なんですが、舞台は清朝から現代の中国になっております。現代に戻ってきた張暁は第四皇子生き写しの男性と出会う。その男性は震天グループという大企業の副会長で……というところからものがたりが始まります。
現代版ジャクギなので、第四皇子役のニッキー・ウーをはじめとして、清朝からのキャストが多々出演しております。それが生き写しか転生です。

私はジャクギ前作のファンで、最後の、綺麗にまとまりつつもこの後の彼らのことを想像させる余地を残しながら終わったところとかが好きなんです。だから、続編が作られると聞いた時は、嬉しいと言うよりも戸惑いの方が多くって。これはこれで綺麗にまとまっているんだから、この後をどうやって作るんかい!?っていう不安もありました。でもあのジャクギの続編なんだから、面白いものとしてまとまっているだろうという期待もあったんです。事実、はじまるまでは結構楽しみにしていましたし。
そんなわけで期待をして10月23日を迎えたわけですが、



……………。


………………。


……………………………。


私、いま、何のドラマ見てるんだろう……?





ジャクギ前作は8皇子と4皇子とのラブロマンスでした。なので、この作品も二人の男性との恋が描かれます。
そんなもんだから途中までは、「大企業! イケメン御曹司! 二人の男子とラブロマンス! その二人の間で揺れるわたし(死語)」という感じです。
使い古されているしチープだけど、まぁ分かる。

しかし。その「大企業! イケメン御曹司! 二人の男子とのラブロマンス!(以下略)」の、その料理の仕方がすさまじい。

何せその中に、その中に、「転生! 記憶喪失! 生き別れの双子の姉! 自殺未遂! 虐待! 二股! 妊娠! 事故死! レイプ! 失踪! 拉致! 親類からの陰謀! 拷問! 転生(またかよ)! ゾンビの如く蘇生! 失明! 夢落ち! ハッピーエンド!」が、間違った方向に全部入っているのだ。何が間違った方向かっていうと、見ていてどんどん「どーでもいい!」っていうか、不愉快になっていくっていうことです。
これは酷い!酷過ぎる!!!
「お前こんな状況なのにこんなこと言うのかよorこいつがこうなってるのにこいつらのこんなん見たくねえよ」、「何でこれがこうなってこうなるわけ!?」、「いや、別にわたしはこいつらでこんなものがたりを見たいわけではない!」が積み重なっていくと、だんだん見ていて辛さを通り越して苛立ちがつのってどうでもよくなる感じ。
何というか、おいしいものを詰め込んで全部ぶち込んでみたら、食材の無駄遣いというのが適切な表現となるような料理が出来上がりました、という感じ。
こんなんだったら出来のいい二次創作を見た方が100万倍マシだよ!

まーまーまー、じゃあストーリーは百歩譲りますよ。とりあえずドラマティックだと思う要素を全部詰め込んでみたんでしょう。それが面白くなかったってだけです。だけど、問題はストーリーじゃない。一番の問題は、清朝では第四皇子だったニッキー・ウーの現代版でのキャラクタ作りですよ。
ニッキーの今作でのポジションは、大企業の副会長で、その会長の息子です。清朝での皇子が大企業の息子になったっていうのは、一応符号でつなげないこともないでしょう。でも、その中身の性質は清朝版と現代版で大分違うです。
ジャクギの第四皇子は、非常にクールです。冷静沈着で、自分の感情はめったに見せないけれど、自分にとって大切だと思った人間は一生守り抜く強さを持ってます。愛した人間に対しては情熱的な一面を見せます。だけど、一方で非情なことも厭わない。いつ動くべきかの時が読める、我慢強さも持った人間です。クールさと情熱。愛情深さと非情。そんな真逆な魅力を持つニッキーに、惹かれる視聴者は多かったのではないでしょうか。
……翻って今回のニッキーはどうでしょうか。ジャクギの続編、第四皇子の生き写し、ということで、今回のニッキ―のキャラクタ造形が気になった人も多いでしょう。そして、あの素敵なニッキーが見られるのではないか、と思った方もおられたでしょう。
その結果がアレです。
……………私はこんなニッキーが見たくてジャクギの続編を見たわけじゃないんだ!!!!と激しく突っ込みたい! こんな、ぴーぴー泣いてるニッキーが見たいわけじゃない! 幼少期に劣等感を抱いていたニッキーが見たいわけじゃない!!こんな、画にならない暗くって辛気臭いニッキーが見たいわけじゃない!!!!もっと素敵でクールで情熱的でおちゃめなニッキーが見たいんだ!!と、心の底から叫びたい!!!
だからこれはすごく、作り手側が慢心から作ったんじゃないのかよ、とすっごい突っ込みたくなるんです。「ジャクギ」という名前が付いているから、それだけで視聴者が釣れるとでも思ったんでしょうか。
だったら大間違いだぞコンチクショウ。

このドラマ、薦められるところが皆無です。万単位のおかねをドブ川に捨てても構わないトゥルーリッチメンなマダムに対しても、「いやー、見ない方がいいよ!?」と言うでしょう。
少なくても、私にとっては「ノーカット完全版発売!? そんなん、全部カットしたいわ!」という、ある意味記憶に残るドラマになりました。
なんでこんなもの見てしまったのだろう。だから私はこういいます。


続なんて見るな!「宮廷女官ジャクギ」、お勧めです!


↑は清朝を舞台にした「宮廷女官ジャクギ」。

深見真「アフリカン・ゲーム・カートリッジズ」

フカミンのブログを見ていたら嬉しい悲鳴。
何と、深見真初期の大傑作「アフリカン・ゲーム・カートリッジズ」が電子書籍として復活していた。角川文庫版が長らく絶版状態だったのでこれは本当にうれしい。
私は今まで何となく電子書籍アンチだったけど、これを聞いたら一気にありがたみが分かってしまった。紙媒体で売れなくなったからと言って絶版されたものが買えるのは嬉しいです。


深見真「アフリカン・ゲーム・カートリッジズ」角川文庫

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何もない空間から銃を生み出す「銃使い」。1万人から1人が発生する銃使いは、銃の携帯が法で禁じられるこの国では、存在そのものが違法であった―。銃使いによる立て篭もり事件に巻き込まれた高校生・矢崎リュウザは、激烈な銃撃戦の中、自らも銃使いとして覚醒してしまう。国家特別銃取締局の攻撃に追い詰められたリュウザを救ったのは、銃使いたちによるレジスタンス組織、アフリカン・ゲーム・カートリッジズだった。
「BOOK」データベースより

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いやあ、私はこの小説、本当に深見先生の「初期」の大傑作だと思うんです。だってこの小説に、深見先生の大好きなものと書きたいものが全て詰まっていて、それで迫力があって面白いんですよ。ついでに言えばこの小説、その「大好きなもの」と「本当に書きたいもの」しか書いてないんですよ。だって中身は「カンフー」「銃撃戦」「青臭さ」「もどかしさ」、そして「男同士のあまりにもプラトニックすぎる愛情」と「レズビアン同士のセックス」。
ここに挙げた単語、割と私は深見先生の作品を読ませて頂いていますが、結構の数の作品に共通しているものです。ヤングガン・カルナバルしかり、GENZEしかり、僕の学校の暗殺部しかり、疾走する思春期のパラべラムしかり……。
……これだけ見れば昔、山本卓先生がおっしゃっていた「(深見先生は)作家になってなかったら犯罪者になっていたと思う」「誰かこいつを逮捕してくれ」っていう言葉が、こと深見先生に対しては至上の褒め言葉であることが分かりますね!
概要は、上の単語とBOOKデータさんのあらすじを読んでいただければ分かるんですが、それだけだとちょっと味気ないので。
近未来の日本。一万人に一人が覚醒するという「銃使い」は、何もない所から銃を生み出す能力を持った人間。「銃使いになるには三つの要素が必要」であり、主人公の竜座はその「三つの要素」を満たしてしまったので「銃使い」として覚醒してしまう。銃使いは日本の法では「GEA(国家銃取締局)」によって即抹殺か実験用にされるかの末路しかない。追われる立場になった竜座を救ったのは山本山茶花という、グラマラスな美女。山茶花は銃使い達のレジスタンス組織「アフリカン・ゲーム・カートリッジズ」のボスだった。
……まぁ、このあらすじの時点で「何で何もない所から生み出すのが銃なんだよ!」と突っ込まれる方もいらっしゃるかもしれないんですが、そんなことはどーでもいいのです。おはなし自体が「銃を生み出す人間」を軸にしているからいいのです。もっとぶっちゃければ、そんなのは深見先生が作者になった時点で、生み出すのが銃でオールオーケーなのです! 補足すればGEAは本当に、銃使いを始末もしくは捕縛する為にあるような組織で、その権限はこと銃使いに対しては結構高い。だから銃使いだけではなく、公安とも険悪な関係になっています。
こんな内容なので、よくも悪くもバランスが悪く、さらに結構濃密なエロ、非常にバイオレンスなシーン、行き過ぎた男尊女卑の思想、バンバン出てくる人死のシーンなど、「ブラッドバス」以上に好き嫌いがはっきりと分かれる作品だとは思うんですが、読んだ中で物語上いくつか存在するひかる部分を見つけ、それを魅力的だと思った人間にこの作品がかけがえのない一冊になるのではないか、とえらっそうなことを言ってみます。私は竜座の成長、九鬼との最高の恋愛、そして、山茶花の開き直りです。
ただ、これは深見先生の欠点になりうる長所でもあるんですが、確かに濡れ場は濃い上にやってることはすさまじいんですが、そこにエロティックさを喚起させるような文章ではないんですよね。そこはまぁ、官能小説ではないのでと言っておきます。
非常に青臭く、若々しく、しかし猛々しさに満ち満ちた深見真の原点であり、「初期」の傑作。