深見真「ヴァイス 麻布警察署刑事課潜入捜査」

深見真「ヴァイス 麻布警察署刑事課潜入捜査」角川文庫

麻布警察署刑事課二係は、管轄内の重要犯罪を隠蔽することを目的に組織された。トップアイドルの覚醒剤疑惑、大物政治家の賄賂…。手段は問わない。二係のエース、仙石は誰よりもスマートに残虐に、犯罪を揉み消す。そんな仙石の行動を見張るため、細川巡査部長は、仙石の部下として、二係内で潜入捜査を始める。極限の騙し合いの勝者はどちらか。“悪を以って悪を制す”汚職警官を描いた本格警察小説。

* * *

祝!深見真、小説に帰還!!(だと勝手に思っている)
最近の深見真の仕事といえば漫画原作が多く、最近の小説は「サイコパス」が多かったし、オリジナルの小説はおそらく2014年に発表された「姫騎士征服戦争」「開門銃の外交官と、竜の国の大使館」以来じゃなかろうか。深見先生もブログで「久しぶりにサイコパス以外の小説書いた」と言っておりましたし。
久しぶりに発表したこの「ヴァイス」は警察もの。麻布、六本木を舞台に汚職警官・仙石重一が下半身のスキャンダルをもみ消したり犯人を拷問したり正義のヒーローのように颯爽と現れたり上司を潰したりのちょう大活躍するという内容です。嘘はついていない。うん。なんつったってこの小説はのっけから、集団系アイドルグループのメンバーが、ヤリまくって覚醒剤キメて彼氏をぶっ殺してその事実を主人公の汚職警官にもみ消してもらいましたという、ハイブリットなイヤガラセを書いてますよ!これぞ深見真!!(爆笑)
その汚職警官を監察するのが、内務監査として麻布警察署刑事二係に配属された細川瑠花。二係の仕事をこなしつつ、内務監査として仙石重一を、黒いところがないかぼろを出していないかと監視します。こうしてこの小説は「監視される」汚職警官と、「監視する」内務監査官のコンビという、少し変わったバディものになったわけです。
この「監視する」「監視される」という構図は「シビュラシステム」と「シビュラ支配下の人間」、また「(クリアカラーの監視官に)監視される執行官」「(潜在犯である執行官を)監視する監視官」という構図にも見えるので、この小説は深見先生がサイコパスの共同脚本を経てかけたものなのかな、とも想像しております。あかねちゃんというキャラクターを経て、「細川瑠花」がかけたのではないかという想像。
この物語は「仙石の物語」というよりは、「監視しながらも汚職の沼に足をからめとられ、その底であがきながら成長する女刑事の物語」にもなるような気がします。
物語のなかで、彼女は刑事としてキャラの中では未熟です。その未熟さを露呈しつつ、物語の後半に家族を人質に取られ、そこから人間的に変わらざるを得なくなります。「ああそうだ、こいつを殺すんだった」「人類の数パーセントは人を殺しても何も思わないキラーエリートだ。細川ももしかするとその数パーセントに入るのかもしれない」。その結果として、内務監査を果たしつつも仙石の「本当の仲間」になることになるのです。
その彼女がこれから、どう、刑事として成長していくのか。
もっと深い沼につかるか、それとも沼にからめとられつつ、監視役としての役目を全うするのか。

文庫オリジナルらしいですが、続編がぜひ読みたい。仙石の行動を見つつ、警官として成長していくであろう「細川瑠花」の物語を、もう少し読みたいと思う。
オネシャス! 深見先生!!!

2016年読書大掃除

2017年になりました。あまり更新のないブログですが、今年もよろしくお願いいたします。
……結局ユーリの感想2話で止まってしまったあああああああああ。


そんなわけでタイトル通り、2016年に読んだ(つってもそんなに読んでない)ものの整理。感想のようなそうでもないようなの列挙です。



「おいしいベランダ。午前1時のお隣りご飯」竹岡葉月/富士見L文庫
考えてもみよう。あなたの部屋の隣に若い男性が住んでいる。ひょんなことからであった彼は29歳(亜潟さん)のスーツが似合うイケメンだ。フリーランスだから在宅で仕事をしている。家にいるときは大体ジャージで、自分が食べられるだけのものを育てているだけと称して部屋中ベランダ中を食える植物で埋め尽くしていて、ついでに作る料理はかなりうまく、隣に住む女子大生(主人公)にふるまっている。
……ありのままの植物男子にやられてしまえばいいよ!!!!



「おいしいベランダ。2 二人の相性とトマトシチュー」 竹岡葉月/富士見L文庫
ありのままの植物男子に以下略ではまったのですが、この小説は、この2巻に出てくる亜潟さん(29歳)の甥の気分になって「29歳のおっさんが女子大生と付き合っているなんて羨ましすぎるそこかわれ!!!」という見方が出来るのではないかと思った。



「雪の鉄樹」 遠田潤子/光文社文庫
祖父や父が日々女を連れ込む、たらしの家で育った庭職人・曽我雅雪。彼は13年前から両親のいない少年・遼平の世話をしている。遼平の祖母からは日々屈辱的な扱いをされているが、少年を世話をする理由は昔のある事件の贖罪のためでもあった。……というのが本書の内容。
その前に読んだ「月桃夜」がとてもよかったので続けて読書。過去にとらわれる人々の熱い愛憎。もう触るだけで火傷しそうなぐらい熱くて激しい。これがドロドロの愛憎劇というとかなり軽いニュアンスになってしまうのですが、東海テレビ的昼ドラになっていないのは雅雪の行動の勤勉かつ素直な愚直さにあるのだと思う。
「あなたが一生をかけて償うというのなら、私は一生かけて恨む。死んでも地獄の底から恨む」
劇中で遼平の祖母が雅雪に言い募るシーンがある。人からこうまで言われる男は過去一体何をしたのか。そして、人からこうまで言われてまで少年の世話をする理由は一体何なのか。その熱量からページをめくる手が止まらなくなる。……だけど最後の一ページに行ったらほっとした気分になったなぁ。ああ終わった、という安堵感が強い。「月桃夜」にしびれた人は是非読んで頂きたい一冊。



「このたびはとんだことで 桜庭一樹奇譚集」 桜庭一樹/文春文庫
直木賞作家(っつってもあの作品はそんなに好きではないのだが)桜庭一樹の初めての短編集。「青年のための読書クラブ」の前身である「青年のための推理クラブ」や、直木賞後に雑誌で掲載された「冬の牡丹」等を収録。
特に「冬の牡丹」「モコ&猫」はよいぞ。社会に出て少しでもつらいと思った人間はぐぐっとくるはずだ。この二作は、男女の微妙な距離(冬の牡丹)と男女の微妙な偏愛(モコ&猫)で、読みつつ、この「微妙さ」が桜庭一樹的でもあり。


ひとしずくの星」淡路帆希/富士見L文庫
数年に一度訪れる天災「星の災禍」で家族を亡くしたラッカウス。神官として聖都で暮らしていた彼の頭には一つの疑問があった。「星の災禍」とはなんなのか。調べるべく入った禁忌の森で無垢な少女と出会い……。
読んだのおととしですが(苦笑)。童話のような詩的なような、静かで美しい恋の物語。あとそんなに長くないので冬休みの読書としてもおすすめ。



「バットカンパニー」深町秋生/集英社文庫
やべえ。超イイ女だよ野宮綾子。「おはようございます。イカれた女です」と言いながらヤクザの目の前ににこやかに現れる。怖すぎる。怖すぎるぐらいイイ女だ、野宮綾子。
野宮綾子社長率いる人材派遣会社・NAS。ここはまっとうな人材派遣会社ではなく、金さえ積まれればヤクザの護衛やテロリストとも相手するちょう無茶ぶりの会社だ。勿論降りかかる仕事もただの仕事ではない。裏カジノに潜入、訳あり少女への護身術の指導、挙句の果てにはヤクザとドンパチ。確かな修羅場(命のやり取りという意味で)の行間から醸し出されるバイオレンスな血の匂いにノックダウンされてください。そして野宮の無茶ぶりに泣き言を言いながら振り回されている社員の姿に萌えてください。「デート&ナイト」(監督:ショーン・レヴィ)みたいなジェットコースタームービーが大好きなひとに特におすすめ。


「レディ・ガンナーの冒険」茅田砂胡/角川文庫
破天荒お嬢様の冒険譚。ファンタジーではあるけれど、ファンタジー(幻想)、ではなく、アドベンチャー(冒険)の小説。15年前の良きジュブナイル
とにかく主人公のお嬢様、キャサリン・ウィンスロウがなんと魅力的なことか!!行動力があり、曲がったことが大嫌い。そして義を重んずるという。そんなかっこかわいい14歳の少女です。そして銃の腕もなかなか(ポイント高いよ!!)



「視線」永嶋恵美/光文社文庫
劇団員の夏帆は副業でやっている住宅調査員の仕事で、昔住んだことのある閑静な住宅街を訪れる。偶然再会した同級生と会う約束をし、再び住宅街を訪れたその夜、通り魔に襲われる。同じ夜にその住宅街で人が一人なくなっていて……。
永嶋恵美お得意の「イヤ汁100%」。どのぐらいイヤ汁100%というのと「泥棒猫ヒナコ」シリーズや「一週間のしごと」みたいな比較的軽いタッチ(っつってもこれもイヤ汁50パーセントぐらいだが)から知った人は結構ドン引きするかもしれない。
それぐらい主人公の女がヤな女(最大の褒め言葉です)。「あんなオバさん族」とかつての同級生をよくよく見ながらその実「あんなオバさん族」になるのを過剰なまでに恐れている(ようにも見える)。あんたと違うんだから、と思いながら、自分がその分類に行きつつあるのを認めようとしない、というか。


さあ今年の読書はジョニー・ウィアーの自伝からだ!!!

ユーリ!!!オンアイス2話

【前回までのあらすじ】
初めてのGPファイナルで惨敗した主人公・勝生勇利は傷心のまま故郷の九州に帰る。現役続行か引退かハーフハーフのまま地元にいるが、ひょんな事から世界選手権5連覇中の王者ヴィクトル・ニキフォロフに興味を持たれる。勇利の実家の温泉にやってきたヴィクトルは、ウホっいい身体&クワドの飛べそうな引き締まったケツを視聴者に堪能させながら「勇利!今日から俺は君のコーチだ!」と全裸で華麗に宣言し……


○2話総括
1.ヤコフいいコーチじゃねーか!!
2.15歳の美少年の半ケツと27歳美青年のTKBというマニア向けの映像が
3.君たちは愛について考えたことはあるかい? → 君たちは自分が思っているよりも無個性で凡庸であることを自覚した方がいいよっていうかよくそれで個性とか言えるよね観客から見たら君たちはせいぜい子豚ちゃんと子猫ちゃんだよ。


さて、2話はまずヴィクトルが日本にくる直前に遡ります。雪が降りしきるサンクトの街で、コーチのヤコフがヴィクトルの日本行きに反対します。「今休んだら戻れなくなるぞ!」というヤコフの言葉が刺さります。
……戻ってこれるか来れないかはともかくとして、いくら世界選手権5連覇中の絶対王者でも1年のブランクというものは馬鹿にできません。1年休んだだけで若い伸び盛りの選手たちはもりもり出てきますし、技術革新もかなり進んでしまうものです……ちゃんと受け持った選手の今後の競技生活のことを心配して考えて、ヤコフはいいコーチじゃないですか(1回目)。
しかしヴィクトルの意思は固く、ヤコフコーチの耳元でロシア語でさよならと告げながら「言うこと聞けなくてごめん」……と去っていきます。どうもヴィクトルは今までも大してコーチの言うこと聞いてこなかったようです。奔放すぎる選手を受け持つと大変です。コーチの血圧は大丈夫でしょうか。

そんなこんなで勇利のところにやってきたヴィクトルですが、まず(温泉を堪能し酒も飲み爆睡したのちにカツ丼をドカ食いしながら)勇利に「痩せろ」とかなりきつめに厳命します。
一方で「君のことを知りたいんだ……」と、じっくりと勇利に近づき、手を重ね、一方の手は頬に添え……ヴィクトルさん!浴衣がはだけてTKB丸見えですよ!!
一方の勇利も唐突にコーチングに来たヴィクトルの行動にうろたえつつ赤面しつつ、あこがれのヴィクトルがいることに「うれしい」と気が付きます。……お前の反応乙女だ!!!
それにしてもヴィクトル、日本を堪能し過ぎ&くつろぎ過ぎ&なじみ過ぎです。畳に布団しいて犬を抱っこしながら上半身裸で寝ています。犬はどうやって連れてきたんだ!説明しろ!!!


一方ロシア本国では「ヴィクトル・ニキフォロフが日本の勝生勇利のコーチになる」ということで大騒ぎになっていました。大量に押し寄せる記者たちにヤコフは「今はモチベーションが上がらない。一年休んで進退を考えたい」と丁寧に答えます。……自分勝手に消えた教え子のことをちゃんと答えるあたり、ヤコフはいいコーチじゃないですか(2回目)。
そんなこんなのうちにロシアのユーリ君がヴィクトルの居場所をひょんなことから突き止め……。


ロシアのユーリ君、(コーチに内緒で)来日。そのヒョウのシャツ日本の商店街で買ったんかい!! 商店街でTシャツを買ったりダサい(ユーリ君談)銅像に写メったり日本を堪能している中、ヤコフから「どこに行ったんだ!戻ってこい!!」と電話で怒鳴られます。まぁユーリ君が子供で未成年であるということもありますが、黙って勝手に消えた教え子に電話して怒鳴ってくれるなんて、ヤコフはいいコーチじゃないですか(3回目)。

はせつ町のリンクに来たユーリ君、まずはあいさつ代わりに勇利に芸術的かつファンタスティックな飛びまわし蹴りをくらわします。身のこなしが軽すぎ。そして勇利は吹っ飛び過ぎ。……この飛び回し蹴り、演技に入れてくれないかしら。キレのあるアティチュードポジションのバレエジャンプが出来そうです。ゆうゆうと滑るヴィクトルに「約束忘れたのか!」と吠えます。

そのユーリ君とヴィクトルの約束について、話はユーリ君が今よりも幼い時分に遡ります。
ユーリ君は今よりも幼い自分から才能豊かで、試合でクワドサルコウを飛んで観客を驚かせ優勝したりしていました。コーチのヤコフが「成長期の身体にクワドは負担になるからやめろ」と言ってもどこ吹く風です。
最近はジュニア選手でもフリーでクワドを入れる選手は少なくはないのですが(SPは禁止されています)、そもそもクワドジャンプ自体シニアの選手でも「1本あっただけでプログラムの緊張感が違う」と言われるほど負担のあるものです。現在は「ジュニアでもクワドがないと世界ジュニアが優勝できない」という、ひと昔前では考えられない状態なのですが、身体に負担になることは変わりありません。……成長期の選手のこともちゃんと考えて、ヤコフはいいコーチじゃないですか!!(4回目)
そんなヤコフコーチとユーリを諫める感じでヴィクトルが語り掛けます。
「君ならクワドがなくても勝てる」→「じゃあ、俺が世界ジュニアで優勝したら、ヴィクトルが振り付けてよ!」→「ああ、いいよ。最高のシニアデビューにしよう」
クワドなしでユーリが世界ジュニアで優勝したら、シニアデビューの振り付けは兄弟子。ヴィクトル自身が振り付けたプログラムがジャッジからの評価が高かったら、振り付けてほしいとも思うわけですよ。それをあっさりと了解してくれたのですから、ユーリ君にとってはこの上なく幸せな状態です。コーチの次に自分に近い人物が振り付けてくれる上に、振り付けは一級品なわけですし。それに、ちょっと論点は違いますがコレオグラファー料は置いとくとしても、ヴィクトルがユーリと同じサンクトにいるため、振り付けのために移動費や滞在費はかからないわけですし。
しかしヴィクトル約束忘れて来日。約束をすっぽかされたユーリ君は怒る……。
……ん? ちょっと待てよ。多分回想の時のユーリ君は今よりも背が低くて顔だちが幼いから、13,14歳ぐらいだと考えていいですよね? でそれでクワドサルコウ……


お前はケヴィン・レイノルズか!!!ケヴィン・レイノルズ……カナダ、バンクーバー出身のスケーター。13年四大陸選手権優勝。軸が細く回転の速いクワドが特徴で、フリーでクワド×3を実行した人類6人目。なお、彼に関しては覚えたジャンプがクワドサルコウ→クワドトウ→3Aという噂あり)


約束を果たしてもらうためにやってきたユーリと体脂肪を落とした勇利を見て、ヴィクトルが提案したのは、2人に同じプログラムを滑って一週間後に勝負してもらう、そして「勝った方のいうことをヴィクトルが聞く!」ということでした。一週間後に、温泉オンアイスが開催されます。
そんなこんなで結局ユーリ君もはせつに、しかも勇利の家に滞在。15歳の少年のあどけない背中とケツをチラ見せさせてカツ丼をドカ食いし(お前もかよ)、しまいには勇利の姉(いました。1話に出てきていました)からユリオと命名されます。いやあ、ヴィクトルの全裸が出てきたときはゲラゲラ笑ったんですが、15歳の少年のケツが!!電波に乗ってしまった!!! この回、27歳美青年のTKBといい15歳美少年の入浴シーンといい(しかもちらっととはいえ割としっかり尻を見せている)、いろいろマニア向けです。
……なんか勇利とユーリと書くのが結局ごっちゃになりそうなので、ユーリ君には申し訳ないのですがこちらの感想でもユリオと書かせていただきますね。ユリオ。ユリオと勇利。うん、うまい具合に区別できましたね。

* *

さて、2話の本題。氷上練習初日。氷の上に降り立った二人にヴィクトルが二つの曲を聞かせます。

「この曲には異なったテーマによる2つのアレンジがある。君たちにはその2つのうち、どちらかのプログラムを滑ってもらう」
共通のテーマは愛。しかし、一曲はアガペーとしての愛。もう一曲はエロスとしての愛だとヴィクトルは言います。エロ……エロ……は!


すみません、「スケート、エロ」なだけで、フィリップ・キャンデロロ版のセッボン思い出した私は阿保です。

まぁ、ロロ版セッボンの胸やけするほど本人のエロさだだもれなのはともかく、ひとつのテーマがエロ、もう一つがアガペーですが、ユリオはエロスの方の曲に反応し、勇利はアガペーの方に反応します。……まてー!!いくらヤンキーでもあんたは15歳のしょーねんでしょうが!!!いくらテーマとはいえエロいのすべったらあーかーんー!!!事案になってしまうだろうが!!!
二人の反応を見たヴィクトルの答えは……

ユリオがアガペーで、勇利がエロス!!

ありがとうヴィクトル。ユリオにエロスとか言わなくてありがとう!!私の思いをくみ取ってくれてありがとうヴィクトル!15歳の少年にエロいテーマのもの滑らせたら振付師の正気を疑います。(まぁ、振り付け次第ですし、良プロならいいぞもっとやれとか言いますけどね!)
このチョイス,私はごく自然だと普通に思いますが、勇利とユリオは不服。「どっちの個性とも逆だろ!」と反論します。が……ヴィクトルは「逆のことをやらないと驚かないだろ」とまず言います。そして……。

君たちは自分が思っているよりも無個性で凡庸であることを自覚した方がいいよっていうかよくそれで個性とか言えるよね観客から見たら君たちはせいぜい子豚ちゃんと子猫ちゃんだよ。

結構言いますヴィクトル。何も言い返せなくなり、固まる勇利とユ―リ。

う、うーんヴィクトル。現世界王者のあんたの言いたいことは(まだユリオの演技も勇利の演技も全く見てませんが)わからないでもない。でもさ、そもそも考えてみようよ。
シニアの(ジュニアとは言わない)GPファイナルまでこれた選手が「無個性で凡庸」っていうのはありえなくないですか!!?
そもそもGPシリーズ自体門戸が狭いものです。6大会あってシングルは1大会につき最大12人までという上限があります。そしてシリーズは一人2大会まで出ることが可能です。枠は6×12の72枠ですが、2大会出場する選手が20人以上いるので、実際はもっとエントリーできる選手は少ないのです。よってシリーズに出られる、という時点でかなりの実力と技術そして個性があるのです。


……という私のばばくさい思いはともかく。1週間後にヴィクトルを満足させられなかったら振り付けはなしになりますが、勝負がついたら勝った方の言うことをヴィクトルは聞くことになっています。
ユリオの要求は「ロシアに帰って俺のコーチになれ」
そして……勇利の要求は「ヴィクトルと一緒にカツ丼食べたい」

「何回でも食べたい。これからも何回でも勝って、一緒にカツ丼食べたい。だから、全力でエロス!やります!」

つまりそれは、「ヴィクトルが自分のコーチになってほしい」! というところで……次回に続く!

* * *

えーっと、今回の感想ですが、とにかくヤコフコーチ大変そうだなと。方や聞く耳持たないロシアンヤンキー、方や言うことを聞かない奔放すぎる男。でもあっちこっちで対応して、追いかけて、諫めて、心配して……いいコーチじゃないですか(5回目)。
あと今回、上のレビューでは書かなかったんですが、勇利がヴィクトルと一緒にいるのがいかにうれしいかというのと、ユリオが現れたことによる不安、というのも描いていてすごいよかったです。……そうだよね、、ユリオの方がヴィクトルと距離近いもんねというのもありますし(あります)、シニアデビューを控えた将来有望なユリオとシニア5年目であまりいい成績が残せていない自分というどんなスポーツにもある残酷な生々しさの表れとか。1話でもそれはありましたけれど。

あ、すごい今更感ある突っ込みなんですが、YOIの世界って男子の特別強化選手一人だけなの?っていうか、「どこにでもいる特別強化選手」と言ってますが特別強化選手どこにでもいねーからな!!! それを映像で見せちゃってるからな!!!


そんなわけで3話に続きます。

ユーリ!!!オンアイス 1話

10月から始まったアニメ「ユーリ!!!オンアイス」。
存在は知っていたけどあまりチェックもせず、友人からPVが送られてきたのですが……これがもうすごい!フィギュアの動きが半端ないうえに、振り付けがオール宮本賢二!!!監修に元全日本チャンプの横谷花絵さん!!しかも本田武史まで声で出ている!!スケオタとしても垂涎の作品が始まる!!!ということで。
そんなわけで見始めました。


雑に1話に出てきたキャラクター紹介。
○勝生勇利……主人公。ガラスのハートを持つ23歳。GPファイナル最下位で惨敗し、それまで契約していたコーチとの関係を解消し地元に戻る。カツ丼が大好物。
○ヴィクトル・ニキフォロフ……世界選手権5連覇中の27歳。勇利が惨敗したGPファイナルで優勝したロシアのレジェンド。スコアが335点って無事人間を卒業したすごい人。鼻が赤い。1話の最後にすごい尻が見られる。
○ユーリ・プリセツキー……ジュニアGPファイナル優勝。可愛い顔のガラの悪いロシアヤンキーで服装のセンスはただのガチンスキー(EDより。つまりセンスは聞くな)。ヴィクトルと同門。

1話総括。
1.アイスバーグのトイレってあんなおシャンティなんですね。
2.フリー4クワド(しかも全部種類が違う)を実施する27歳って体力どうなってんのよ。
3.尻がすべてを持って行った。


最初はソチで開催されたGPファイナルから始まります。場所はどう見てもアイスバーグ。そこで勇利は最下位と惨敗してしまいます。
……まあ、GPファイナル自体、シーズン序盤な上にシリーズを勝ち抜いた6人しか出られないので「惨敗」という単語はどうかと思いますが。(割とGPシリーズを「勝ちに行く」というより「調整」として見ている選手もいる。ジュベールははっきりと「ユーロとワールドのための調整」って言ってた)……そういえば放送局のテレビ朝日ってGPシリーズを「世界一決定戦」と位置付けていましたね。いらないチャチャをいれてしまいました。
ちなみに1位ヴィクトルと最下位勇利の点数(小数点切り捨て)の差を見てみると……

1位 ヴィクトル・ニキフォロフ 335点
6位 勝生勇利 232点

……100点差がある!!!! 1位の点数は無事人間を卒業した選手の点数ですね!!どうなってんのよ!!!
でも勇利君、「惨敗」「演技がボロボロ」という割に232点は出ているんですから、地力はあるってことですね。でもまぁ100点差がつくと確かにボロボロと言わざるを……そういえば去年のGPファイナルの男子が似たような結果でした。(小数点切り捨てで、1位羽生330点、6位ムラデー235点)。そのときムラデー君が「惨敗した」とは、少なくとも報道ではなかったように覚えておりますがどうなんでしょう。
そんなこんなで結果が残せなかった勇利君はトイレで泣いてしまいます。…アイスバーグのトイレって個室が赤くなってるんですね。なんておシャンティ。このトイレに羽生君も入ったのかしら。そこに現れたのがユーリ・プリセツキー。JGPファイナルの優勝者です。

「来年、俺はシニアに上がる。二人もユーリはいらない。才能ない奴はさっさと引退しろ。バーカ!!」

ロシアンヤンキー丸出しの本性で勇利にタンカを切り……いやいやいやちょっと待ってよあんた。「二人もユーリはいらん」てあんた。あんたの国にはユーリが二人どころか、同じ時代にアレクセイは2人いたし(ウル様とヤグディン)、セルゲイも2人以上(ヴォロノフとドブリン。ベラルーシにもダビドフという苗字のセルゲイがいて、3選手が一緒に活動した時期はちょっとだけかぶっています)いただろ!!ついでの2人のアレクセイはアレクセイという名前のコーチ(ミーシン)に同時期ついてたじゃんね! あんたの国だけで名前の重複こんだけおるんだから、日本の勇利君がちょっと失敗したからって二人もユーリはいらんなんて、そんなこと言わんといてや!!!


・・・そして時間はファイナルが開催された12月から一気に年を越して4月。勇利君はファイナルの失敗を引きづったまま全日本に臨み、再び惨敗し、その後の国際大会に派遣されずにシーズンを終えます。4CC、ワールドはもちろん、ユニバーシアードにも派遣されません。コーチとの関係も切り、デトロイトから地元の九州に戻ってきます。ああ温泉。温泉いいなぁ……。実家が温泉とか神だろ!!! アスリートにとってすごいいい環境です。
シーズンが終わり、大学を卒業した勇利の心は引退か現役続行かがハーフハーフでした。大体の大学生スケーターは卒業と同時に引退になってしまいます。大学卒業した彼にとって、続けるかやめるかどうかの瀬戸際にありました。
同時期、東京では世界選手権が開催され、ヴィクトル・ニキフォロフが5連覇へと挑戦中でした。

さて。
1話での見どころはなんといっても、世界選手権でのミヤケン振り付けのヴィクトルのフリープログラム。そしてそのヴィクトルのプログラムを幼馴染の前で完全にコピーする勇利君。
勇利君は幼いころからヴィクトルにあこがれ、地元のリンクで幼馴染と一緒にヴィクトルの動きの真似までやってます。愛犬の名前もヴィクトルで実家の自分の部屋もヴィクトルのポスターだらけ……お前ただのファンじゃねーか!!www
このヴィクトルのジャンプ構成なんですが、非常にクレイジー無事人間を卒業した人の構成です。
それがどんなものかというと……


○フリーで4クワド(種類はすべて違う。ルッツ、フリップ、サルコウトウループ
○カウンター3A。(羽生君がよくやってるやつ)
○3Aからのコンビネーションで3ループ入り(そもそも3ループをコンボで付けられる男子選手はごく稀。)
○最後のクワドは4回転トウ+3回転トウ(乳酸どうなってる?)

……………体力どうなってんのおおおおお!!!?点数よりもまずそこ!!
いやあ、確かに肉体のピークっていうのは人それぞれですよ。32歳でSP2クワドやってたコンスタンティンメンショフという鉄人もいらっしゃいましたし。でも、1)27歳で、2)クワドの種類が4つで、3)かつノーミスで滑れる、ということは、彼の周りだけ何か違う磁場が働いて重力を感じなくなっていたのだな!!イコール、無事人間卒業。……としか考えられません。
ちなみにこのシーン、バタフライを下から映したり、ルッツフリップのエッジをちゃんと分けていたり、ステップターンのところなんてただの神。スピード感が出ててマジで神です。
勇利君のコピーシーンでもありましたが、彼のシーンではエッジの深さやスケーティングを強調してやっていたような気がします。最後のスピンでふらふらしたのはそれっぽい。


なお、この勇利のヴィクトル完コピの演技なんですが、1)幼馴染の子供によって動画でアップロードされ、2)光の速さで拡散され、3)ヴィクトルの手元に届き……。温泉旅館に本人登場。

「今日から俺がお前のコーチだ。お前をGPファイナルで優勝させるぞ!」

温泉で!堂々たる宣言!!もちろん全裸!!!尻!!!!これはクワドの飛べる尻!!!!!!
………いやー!!まさかフィギュアスケートのアニメで尻を見るとは思わなんだあっはっは。でもあの尻はクワドが飛べる尻だよ!!!尻がすべて持って行った感はあるよあっはっは。

* * *

そんなわけで雑に1話の感想を書きましたが、早く2話がみたいです。次は九州にロシアンヤンキー・ユーリ君も現れるみたいだしどうなるのよ!!早く来週になれ!!!

羽生君のお殿さま姿見てきたよ

殿、利息でござる!」を見てきた。つまり、お殿さま姿の羽生結弦選手を見てきた。
大事なことなので2回言う。殿さま姿の羽生結弦を見てきた。場所は地元のユナイテッドシネマ。

映画の感想については映画ファンの方が語って下さると思うので、羽生くんの事だけ書きます。
多分映画館にいた何割かは羽生君目当てで来てる人がいただろうとは確信している。何故ならば私がそれだから。今更感モリモリなことをかく。2015年に紅白歌合戦の特別審査員、家庭画報の和装姿等々を見ている人は絶対に確信しているだろうが、羽生君は、和装が恐ろしく似合うのである。 和装になると、凛々しさ、清涼感が3割増しになるのである。ボーン姉さんもきっと「狩衣はユヅに着せるしかないわ」「ユヅが狩衣着ると清涼感増すに決まってんじゃないのよ」とか考えながら「SEIMEI」の振り付けをしたんじゃなかろか。
そんな羽生君が若殿役である。仙台藩第7代藩主訳である。要するに、和装+ちょんまげである。ちょっとまって、和装+ちょんまげだろ!?


似合うにきまっている!!!


そんなわけで3分ほど出演していた羽生君は、立ってるだけで本当にお殿さまでした。白い足袋、白袴、水色の紋付は見ようによってはパガニーニの衣装と同じ色に見えるね!(重症)
またこの映画、主要登場人物たちが出会っていく人物がだんだんと偉くなっていくのだが、その偉いトップとして最後に現れるのが羽生君である。まさに王者。まさに! まさに若様!! 友情出演と書いてあったが案外台詞は多く、城から宿場町のある造り酒屋の家に行き、用事を済ませると「籠も馬もいらぬ!歩いて城まで帰る!」と言ってスタスタ去っていく。最後のこのテンションはいつものはぬーくんじゃね? と私が思っていると彼は風のように去っていくのである。
何という3分。羽生君が現れた瞬間は、少ない観客(30人ぐらい?)がマジでざわついたぜ。私のテンションは勿論上がらざるを得ない。
あ、映画自体は面白かったです。「武士の家計簿」にもっとコミカルな部分を足した感じだと言えばよろしいでしょうか。もう一回見ようかな。
あの3分はあと10回見ても足りません。

15−16 このプログラムが凄い!

15−16シーズンも残すところチームチャレンジカップのみになりました。
概要ですと2年に一度開催、と書いてありましたから、これからは国別→TCC→国別→TCCのサイクルでワールド後に開催するのでしょうか。その辺りが気になります。
という前置きはともかく。
去年のワールド後、おっかなびっくり始めた企画が反響がありましたので、今年も始めようかと思います。題して、

「15‐16シーズン このプログラムが凄い!」

概要
15‐16シーズンにお披露目されたプログラムで「これが良かった!」「このプログラムが最高だった!」「この選手のこの演技最高!」というものを、投票、もしくはコメント形式で募集します。集まった票とコメントは集計してランキングとしてブログで発表致します。皆様の投票やコメントと共に、改めて皆様と共に14‐15シーズンがどんなシーズンだったか、どの選手のどんな演技が印象的だったか、どんなプログラムが魅力的に映ったかを振り返ろうという企画です。

投票対象
15‐16シーズンにアマチュア選手として活躍した全カテゴリーの選手の、SP・FSの全プログラム。
前シーズンからの続行プログラムも投票可能です。

投票方法
投票は主にツイッターでお願い致します。
1.ハッシュタグ#1516このプロ凄をつけてツイート
2.イリーナ・クロスカヤ@chiyokoraitoに向けて@ツイート
ツイッターに登録していない方で投票して下さる方は、この記事のコメント欄にてお願い致します。
「○○選手のSP」「○○選手のオペラ座の怪人」などのタイトルを挙げるだけのツイートもしくはコメントでオーケーです。
プログラムの感想等のコメントは任意です。
おひとりあたりの投票に上限はありません。


投票期限
ワールドのエキシビション終了後〜2016年5月1日23時59分迄に致します。

補足
投票件数が50件以下の場合、この企画自体をなかったことにしてサメ映画を紹介するページになります。

それでは皆様、投票を心よりお待ちしております。
※今年こそ全ての投票を公開致します。

遠田潤子「月桃夜」

遅ればせながら、明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い致します。
だいぶ空いてしまいましたが、本の感想です。

遠田潤子「月桃夜」新潮文庫nex

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この世の終わりならふたりの全てが許される。奄美の海を漂う少女の元に、隻眼の大鷲が舞い降り、語り始めたある兄妹の物語。親を亡くし、一生を下働きで終える宿命の少年フィエクサと少女サネン。二人は「兄妹」を誓い、 寄り添い合って成長したが、いつしかフィエクサはサネンを妹以上に深く愛し始める。人の道と熱い想いの間に苦しむ二人の結末は――。南島の濃密な空気と甘美な狂おしさに満ちた禁断の恋物語、待望の文庫化。
新潮文庫の紹介文より http://shinchobunko-nex.jp/books/180052.html

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兄と妹の恋ものがたりという今も昔も通じる「少女小説」の世界。そして、読了後の印象は、読むだけでむせ返るほどの甘い花の香りが漂うものがたりだ、ということだ。そのむせ返る感じは息が詰まる感じに似ていて、その切迫感は主にフィエクサを見ていると読み手に伝わってくるものでした。
それもその筈で、理由は2つほど。一つはフィエクサの生い立ちにあって、もう一つは描写の主軸がフィエクサにあること。フィエクサはヒザの生まれで、ある登場人物が「ヒザを産まなきゃいけない女の気持ちが分かるか。母親としてどんなに惨めかわかるのか」と嘆くシーンがある。ヒザは島の中では最下層で、生まれたときから死ぬまで自由はない。母親として、一生自由のないヒザの子どもにしてやれることはないからだ。両親を亡くし、周りから疎まれたヒザの少年の元にやってきたのが、自分よりも弱い存在、父親を亡くしたばかりの少女だった。フィエクサはサネンを自由にしてやると誓い、二人は「兄妹」として寄り添って生きていった。
これだけでフィエクサがサネンに対して深い愛情を抱かずにはいられない要素が詰まっている。だが、フィエクサとサネンは、山の神さまに対して「兄妹」の誓いを立てた。この誓いが最終盤において重要になってくるのだが、だんだんとフィエクサを苦しめていく。誰よりも大切で守りたい妹。そんな妹を深くあいしてしまった。妹だけど血は繋がっていない。血は繋がっていないけどずっと兄妹だと約束をしてしまった。そして自分が愛情を向ける相手はサネン以外存在しない。
そんなフィエクサのもどかしい思いが、濃密な花のにおいになって読み手の喉のまわりに漂ってくるのだ。
この二人がどうなるかはオビを見ると察しがつくかもしれない。濃密な少女小説の流れと、奄美地方の生あたたかいしけり。半ば狂気に彩られた恋ものがたりが読みたい方には是非、是非。


個人的なハイライトシーンは、フィエクサがサネンを押し倒すシーンよりも、山の神さまがフィエクサに裸踊りをさせたシーンです。全然笑えないシーンなんですが、山の神さまがころころ笑うのも酷いなぁとにやにやしながら読んでしまうのです。